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閉経後の女性における骨粗鬆症の診断と治療

京都大学大学院 医学研究科 加齢医学 荒井 秀典 先生

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閉経以後の骨減少因子は? いかに骨粗鬆症を予防するか
   
骨粗鬆症の治療は、ホルモン補充療法 内科医→産婦人科医→整形外科医のチーム医療

 

<21世紀の高齢化社会における問題>

寝たきり老人を作らないためには、虚血性心疾患脳血管障害などの血管病・動脈硬化の予防が大事であることはいうまでもないが、骨粗鬆症による骨折が寝たきり老人の2番目の原因になっており、閉経後の女性をスクリーニングして、ハイリスクの人を早めに治療することが大事である。アルツハイマー型、脳血管性痴呆の予防は難しいが、痴呆になっても寝たきりを作らないことが大事である。
 骨粗鬆症は、低骨量でかつ骨組織の微細構造が変化し、その為に骨がもろくなり骨折しやすくなった病態。腰背部痛・脊柱変形・骨折を主症状とする疾患である。

高齢者においては転倒によりADLが低下する場合があるので、注意が必要である。その危険因子として以下のようなものがある。

1  脳血管障害
神経・筋の機能低下
循環系異常
  起立性低血圧・不整脈・めまい
知覚障害
骨・関節疾患
薬物使用(向精神病薬など)
生活環境

 骨折に関しては、骨・関節疾患が大事であることはいうまでもないが、それ以外に気を付けなければならないのは、脳血管障害、神経機能の低下、循環器系の異常、知覚障害、薬物の副作用である。
 骨粗鬆症は高齢者のQOLを維持するためにその予防が重要な疾患である。

日本における骨粗鬆症患者約1000万人を数える。

また大腿骨頚部骨折患者年間約9万人いるといわれている。

 骨粗鬆症は、2030年ぐらいには約3人に1人ぐらいが65歳以上といわれる未曾有の高齢者世界において、QOLを維持するためにも大事な病気である。理由として、日本では骨粗鬆症の患者数は1000万を数えており、たぶんこの割合はもっと増えるものと考えられる。
 大腿骨頚部骨折で、40%の患者は社会復帰できないといわれ、骨折を起こす患者は年間に約9万人である。これも徐々に増えることが予想され、今後60年間に世界の骨折率は現在の約3倍と予想される。閉経後の女性では、だいたい20%骨量が下がると考えられ、充分な注意が必要である。
 骨粗鬆症は、生活習慣病といわれる動脈硬化性の糖尿病、高脂血症、高血圧症と同様に、生活習慣がその発症に関わる病気である。

 

<閉経以後の骨減少の因子は?>

 閉経以後に骨密度が減少する原因にはどういうものがあるか?それはエストロゲンが欠乏してくるからである。エストロゲンの作用は多岐にわたっており、エストロゲンの欠乏によりインターロイキン1、TNFなど様々なサイトカインの産生が増加し、骨吸収因子の産生が抑制されることにより、破骨細胞が増加する。そのため、骨吸収が増加し、骨形成が低下して骨量が減少する。他の原因には改善が可能なもの、不可能なものとがある。まずカルシウム摂取量の減少は、日本人全体の問題である。1日1.5gのカルシウム摂取が必要と考えられているが、日本人におけるその摂取量は3分の1の、500mg以下である。閉経後に限ったことでなく、日本人においてはカルシウム摂取量が少ないというのは大きな問題である。
 加齢によりビタミンDの作用が減弱する。従ってビタミンDを多く含む食品をとる必要があるが、年齢とともに外に出る機会が少なくなり、日照に暴露する時間が減少し、ビタミンDの活性化が起きにくくなる。高齢化が進むと、家にいるのが多くなり、運動しなくなり、これも骨量の減少をきたす一つの因子である。
 除去し得ない危険因子としては加齢、人種、家族歴、遅い初潮、早期閉経、骨折歴などがある。人種に関しては特に黒人やアジア人では進行しやすいといわれる。
 骨の代謝は、骨の吸収と形成とのバランスで制御されており、正常な状態では骨が吸収されてもほぼ同じ量の骨が形成されるが、骨吸収にみあうだけの骨形成がおきない場合、最終的には、骨量の減少により骨折の危険性が出てくる。
 除去しうる危険因子として、カルシウム不足、ビタミンD、Kの不足がある。インスタント食品に多く含まれるリンの過剰摂取、塩分のとりすぎや、最近はやりのダイエットなどで極端な食生活をすることも含まれる。
 あとは運動不足、日に当たらない、喫煙などあげられる。さらには過度の飲酒。コーヒーも、飲み過ぎはよくないので、2杯以内にするよう指導が必要である。
 女性で、初潮が遅く閉経が早い、あるいは、生理、月経周期が不定期という人は要注意である。タバコを吸う、運動不足がある、あるいはカルシウム不足、こういった食生活をしているかたは、できるだけ、骨粗鬆症のスクリーニングをして、治療を早目に開始することが大事である。
 原発性の骨粗鬆症だけでなく、内分泌性の疾患など、他の病気からも骨量の減少がおこるので、続発性の骨粗鬆症が疑われた場合、内科医と相談して治療を進めることが必要である。
 甲状腺機能亢進症、極端な栄養不足、慢性関節リウマチ、膠原病があってステロイドを服用している場合、また糖尿病においても骨量が減少しうるので、これらの病気の担当医と相談しながら骨粗鬆症の治療を進めることが大切である。
 原発性骨粗鬆症は、閉経後に起こる高回転型と老化による低回転型がある。高回転型の原因は女性ホルモンの減少であり、主に海綿骨の骨量が減少する。椎骨や橈骨遠位部が骨折の好発部位である。低回転型の原因は加齢やカルシウム不足であり、皮質骨、海綿骨いずれも骨量が低下し、主に大腿骨近位部、長管骨が骨折しやすくなる。高齢者においては、一度骨折すると治りにくいので、ハイリスクの人を積極的に治療することが重要である。
 骨粗鬆症の診断に関しては、症状がなくても閉経後の女性であれば、問診や骨密度測定を行い、要精検の人についてさらに血液・尿、レントゲン検査により骨粗鬆症の診断を進める。腰痛、円背など症状のある人は、問診、診察、レントゲン検査、骨密度測定、血液・尿検査により鑑別診断を行い、骨粗鬆症の診断基準に基づいて診断を進める。
 腰痛を訴える場合の鑑別診断であるが、整形外科的な疾患として変形性脊椎症、椎間板ヘルニア、脊椎損傷、内科的疾患としては腎盂結石、慢性膵炎、動脈瘤などがあげられる。骨髄腫や転移性骨腫瘍などの悪性疾患などが疑われる場合、整形外科、内科の医師と相談することが必要である。
 原発性の骨粗鬆症の診断基準は2000年に改定された。その診断基準によればレントゲン上に脆弱性骨折があるものは、原発性骨粗鬆症と診断してよい。骨折がない場合は、骨密度をDEXAで測定し、若年の成人の平均(YAM)と比べて70%未満であれば骨粗鬆症と診断する。正常は80%以上であり、70%以上80%未満を骨量減少とし境界域とする。
 骨粗鬆症と診断された場合、基本的に治療の対象となる。たとえ境界域であっても、骨吸収マーカーの値が増加していれば、治療の対象となる場合がある。
 診断を進める上で、骨粗鬆症で保険がとおっている検査は3つある。その中の一つ骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)は骨形成マーカーである。もう一つは、骨吸収マーカー。骨吸収の程度を表す。尿中NTxとデオキシピリジノリン(DPD)がある。これら骨吸収マーカーはいずれもコラーゲンの代謝産物である。
 閉経後特に症状が無くても、できれば骨吸収マーカーあるいは骨形成マーカーをみて、骨密度を測定する。骨密度が80%以上と正常であっても、骨吸収マーカーの値が高い場合は、投薬はしないにしても、カルシウム摂取、運動など、生活習慣の改善を積極的に勧める必要がある。
 70%以上80%未満のボーダーラインの場合、もし骨吸収が亢進している場合は、ホルモン補充療法を中心とした治療を始める必要がある。
 70%未満の場合は、もちろんホルモン補充療法を中心として、カルシウム、ビタミンDを併用し、強力に治療を進める必要がある。
 ホルモン補充療法をすでに行っている患者において、骨密度が低値を示す場合、さらに併用療法を行い、骨折予防をすることが必要である。
 骨吸収阻害剤の投与中の患者においてその効果が出ているかどうかは、骨吸収マーカーが低下することによって判定し、30%以上低下すれば効果ありと判定する。
 骨密度は、半年以降に骨量の効果で出てくるため、骨密度の効果判定は6ヶ月後を目安とし、骨代謝マーカーに関しては治療開始後3ヶ月目に30%以上低下していれば効果ありと判定する。効果が少なければ、治療を強化する必要がある。
<いかに骨粗鬆症を予防するか>
 現在骨量が充分に保たれていても、閉経後6年以内に20%骨量が減少すると考えられており、最終的な予測骨量が骨粗鬆症のレベルまで低下する可能性のある女性では適切な予防を行う。骨量減少に対する予防は閉経直後、できるなら月経が不規則になった時点から開始することが望ましい。
 骨粗鬆症を防ぐためのライフスタイルとは何か。一つは一日三食規則正しく食べ、適正な体重を維持すること。次は十分な量のカルシウム摂取である。日本人のカルシウム摂取量は不足しているので、牛乳、豆腐、ワカサギ、イワシ、サクラエビなど、野菜では小松菜、チンゲン菜など、そういった食品を中心に摂取する。牛乳がダメな人は、ヨーグルトを勧める。カルシウム吸収促進作用があるのは、乳糖、蛋白質、脂肪、ビタミンDなどである。吸収抑制作用としてリンがあり、インスタント食品、ラーメンなどに含まれているので、摂りすぎないように指導する。
 制酸剤は腸管からのカルシウム吸収低下の一つの要因であり、特に高齢者にはH2ブロッカーなどを漫然と投与することは、カルシウムの吸収を妨げることがあり避けるべきであろう。さらに緩下剤、利尿剤などもカルシウムの吸収を阻害するので注意が必要である。抗痙攣剤、ステロイドをはじめとして免疫抑制剤などの薬剤を服用中の人は、骨量の低下の可能性があるので充分な注意が必要である。
 最後に運動である。30分以上の運動が必要である。ある程度負荷をかけることが大切である。自転車をふつうにこぐだけでは適切な運動とはいえない。早足で30分以上歩くよう指導する。もちろん高齢者の女性には、足腰や膝の問題もあるので、そういう患者に関しては難しい面もあるが、座った状態でもできるものもあるので、その患者さんに合う運動メニューを決めることが必要である。
骨粗鬆症の治療は、ホルモン補充療法
骨粗鬆症の診断がついた女性においては、禁忌がない限りホルモン補充療法が治療の中心となる。
 薬剤として保険が通っているのはカルシウム、カルシトニン(注射剤)、活性型ビタミンD、エストロゲン、フラボノイド、ビタミンK、ビスフォスフォネートがあり、この中の薬を単独ないしは併用にて治療を行う。
 閉経後の女性のように、骨吸収が亢進している場合、ホルモン補充療法を中心に、必要に応じてカルシウム、活性型ビタミンDを組み合わせる。腰痛が強い場合カルシトニンを週一回程度筋注すると効果的である。骨量の低下が著しい場合はビスフォスフォネートを併用する。高齢男性で、骨形成が低下している場合は、ビタミンKが有効である。
 日本人のカルシウムの摂取は、非常に少ない。NIHでは一日あたり1.5gが必要であるとしており、日本人の摂取量を500mgとすると、1gを薬で補給する必要がある。カルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンが増加し、骨からカルシウムを動員することで、血清カルシウムをもとに戻そうとするので、骨量が減少することになる。ホルモン補充療法中には、骨吸収が抑制され、骨形成が亢進しているため多くのカルシウムを必要としており、カルシウムの同時投与が望ましい。
 活性型ビタミンDが使われるのは、特に高齢者において、ビタミンDの腸管での吸収が悪くなり、カルシウムの吸収が低下しやすいため活性型ビタミンDを補給する必要が生じる。ビタミンDとカルシウムを併用する場合には、高カルシウム血症に注意するとともに、高カルシウム尿症のチェックが必要となる。すなわち、血中カルシウムは11.5を越えないようにし、尿中カルシウムとクレアチニンが0.3を超えないよう注意する必要がある。
 ビタミンKは、納豆などに多く含まれているが、唯一骨形成作用が期待され、ビタミンKと反対の作用をする、ワーファリン服用中の患者には投与できない。
 ビスフォスフォネートは破骨細胞のアポトーシスを誘導することにより骨吸収を強力に抑制する新しい薬剤として期待されている。現在アレンドロネートとエチドロネートが市販されている。
 特に最近発売されたアレンドロネートにおいては腰椎の圧迫骨折などが約半分になり、大腿骨頸部骨折の頻度が減少することから、期待が大きいと考えられる。
 女性ホルモンは、骨吸収にも骨形成にも効くと言われている。ホルモン補充療法の禁忌は、子宮外膜癌、乳癌、不正性器出血、血栓・塞栓症、急性肝炎などがある。
 比較的禁忌としてはエストロゲン依存性腫瘍の家族歴、肝疾患、糖尿病、重症の高血圧、肥満などがある。
 できる限りエストロゲンとプロゲステロンの併用を行う。なぜなら、エストロゲン単独では効果が弱く、子宮内膜癌や乳癌の発症頻度が増加するからである。
66歳の女性で、変形性膝関節症アキレス腱炎があり、台に乗ってものをとろうとして転んで腰部を打撲した。レントゲン上明らかな骨折はなく、叩打痛もない。DEXAにてYAMの60%と低下。ALPは軽度上昇していた。カルシトニンが低値のため、カルシトニンの投与を開始した。他に追加すべき治療はなにか。 66歳女性でありホルモン補充療法がされてないのであれば、まずはホルモン補充療法をすべきであろう。
 さらには、カルシウムの摂取が少ないと考えられるので、カルシウム製剤を追加する必要がある。
 半年間フォローして骨量が増加しなければ、ビスフォスフォネートなどほかの薬を投与する必要が生じるかもしれない。
64歳の女性で、変形性膝関節症と変形性腰椎症でフォロー中。慌てていて敷居で転倒。第三腰椎の棘突起に叩打痛があり、圧迫骨折が強く疑われた。検査すると、DEXAでは骨密度低下なく、腰椎レントゲンは正常であった。レントゲン所見で安心してよいか。 MRIをとって、本当に圧迫骨折がないかどうか確認する必要がある。レントゲンだけではなかなか骨折の判定が難しい場合があるので、強く骨折が疑われる場合はMRIを併用すべきであろう。
 

<内科医→産婦人科医→整形外科医のチーム医療>

  骨粗鬆症の治療はチーム医療である。内科医は食事指導など生活指導全般を行い、服薬のバランスをチェックする。婦人科医を中心に、ホルモン補充療法を行い、その副作用のモニターを行う。骨折の治療やリハビリについては整形外科の先生に任せる。できれば、一人の患者にこの三科の医師が関与し、治療を継続することが望まれる。