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最近の産婦人科麻酔

京都大学医学部付属病院手術部助手:難波 恒久 先生

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<麻酔の種類>

・全身麻酔:短い局所処置 〜子宮鏡,D&C,円錐切除など〜
・脊椎麻酔:AT,C/S,円錐切除など
・硬膜外麻酔:分娩麻酔
・組み合わせ:より大きな手術〜広範子宮全摘など〜
 

<全身麻酔>

・静脈麻酔薬―ラボナール,ソセゴン,セルシン
・吸入麻酔薬―セボフルレン


全身麻酔だけで行う手術というのは、大抵の場合、短い局所処置というのが多いです。デイ・サージャリーで最も行われている全身麻酔の手術はというと、子宮鏡です。それから、アウス、コニゼーション、円錐切除です。その他としては、尖圭コンジローマの焼灼とか、あるいは子宮内物除去とかの、局所の非常に短くて済む処置。これが全身麻酔だけで行う良い適応です。
 

<脊椎麻酔>

脊椎麻酔では、例えば、円錐切除とかが行われています。
 

<硬膜外麻酔>

硬膜外麻酔は大抵の場合、分娩です。無痛分娩のときに行われます。そのほか、全身麻酔だけでは術後の疼痛とか管理が非常に難渋する大きい手術では全身麻酔と硬膜外麻酔を組み合わせてやることもあります。

 
 

<全身麻酔の副作用>

悪心・嘔吐,低血圧,呼吸抑制,頭痛,めまい・ふらつき

外来手術で一番困るのが悪心・嘔吐です。外来手術で緊急入院になる患者さんは100人中1人ぐらいの割合でいるのですけれど、そのうちの90%までが悪心・嘔吐で帰れないという患者さんです。これさえ予防できれば、外来手術の緊急入院というものは劇的に減るのです。
悪心・嘔吐以外としては、血圧が下がったりとか、呼吸抑制があったりとか、腹痛があったり、目まいがしてきたり、ありますけれども、これは頻度として少ないですし、しかも患者さんにとってもそれほど大きな訴えにならないことが多いです。
悪心・嘔吐だけは歩くと車酔いみたいな状態になりますから、ゲロでも吐いて、「先生、もう帰れません。」と言いますから。副作用としての、悪心・嘔吐対応を非常に重要視しなければいけません。

 

<ラボナールによる麻酔>

血圧低下,呼吸抑制

ラボナールによる麻酔では、患者さんはすぐ寝ますのでアウスとかが簡単にできるわけですが、血圧が下がりますし、呼吸抑制がきます。京大病院ではラボナールによる全身麻酔を産婦人科の先生がされることはほとんどなく、NLA(ソセゴン、セルシンが多いです)の麻酔がほとんどです。

 

<ソセゴン・セルシンによる麻酔>

肝臓による代謝,手術時間に比して作用時間が長い,投与量が過量になりやすい,
術後の呼吸抑制,悪心・嘔吐

ソセゴン、セルシンによる麻酔は呼吸抑制があまり来ないので安全度は高いのですが、これらの薬は、肝臓によって代謝されますから、10分とかせいぜい20分ぐらいで終わる手術時間に比べて、代謝所要時間が1時間、2時間オーダーと、ケタ違いに長くなります。患者によっては痛がりますから、それに応じてソセゴン、セルシンを追加したりすると投与量が過量になりやすくなり、術後に呼吸抑制が起こって、手術が終わったにもかかわらずなかなか目が覚めないということが起きたりします。そして、ソセゴンによる影響で悪心・嘔吐はおおく発生します。

 

<セボフルレン麻酔>

急速に導入,覚醒速やか,呼吸によって排出される,術後の呼吸抑制が少ない,
術中の疼痛コントロール容易,におい

セボフルレン麻酔のためには、麻酔器が必要です。気化器の中にセボフルレンを入れて、ダイヤルを回すことによって麻酔として吸い込むやり方になります。

セボフルレンの特徴は急速に導入ができ、覚醒も速やかな点でしょう。ほとんど1分前後で意識を消失して眠っていくのがあります。覚醒も速やかです。目が覚めたらもう患者さんは、術者と検査結果についてディスカッションをすることができます。また術後すぐに自分で手術台からベッドに移ることができます。

呼吸によって排泄されるので、ソセゴン、セルシン、あるいはラボナールなどのように肝臓によって代謝されなくても覚醒します。息をしている限り、どんどん、麻酔は浅くなっていって2〜3時間もすれば、もう家に帰れる程度までに麻酔が覚めます。術後の呼吸抑制は麻酔の切れがいいので少ないですね。術中に子宮鏡とかやっていますと、ある一定の点だけ非常に痛いのです。あとは全然痛くないです。その点だけ麻酔を深くしていきます。コントロールが容易です。

ただ一つだけ欠点がありまして、ガス麻酔薬ですので少し臭いがあります。その臭いはシンナーのような臭いなのです。

大抵の人はやはり嫌な臭いだと言います。でも、嗅いで意識がなくなるまで1分ですから、1分間だけ少し嫌な臭いがしたかなと分かる程度で、1分後にはもう患者さんは夢うつつです。1分間だけ我慢してくださいみたいなことをあらかじめ説明しておきます。

 

<京大付属病院のデイサージャリー診療部>

リカバリールーム,ステップダウン・リカバリーの説明(リンク参照)

京都大学付属病院日帰り麻酔

 

<脊椎麻酔>

適応 : 凝固系障害がない,脊椎狭窄症など著しい脊椎障害がない,神経障害がある場合は要注意,AT・C/Sなど下腹部開腹手術

脊椎麻酔というのは帝王切開などでつかわれる方も多いかと思いますけれども、適応というのは凝固系障害が無いということに対してでして、例えば、先日あった例では、HELLP症候群で血小板数が下がっていたら、やはり脊椎麻酔は嫌ですよね。そのようなことが無いということを確認してから、施行します。あと、脊椎狭窄症などの著しい脊椎障害がないとか、神経障害がある時は要注意です。

 

<局所麻酔薬の選択と、比較>

ネオペルカミン(ジブカイン),マーカイン(ブピバカイン),カルボカイン(メビバカイン)
 

ジブカイン
脊椎麻酔に使う薬ですけれども、大抵の先生方は商品名:ペルカミン・ネオパルカミンと呼ばれるジブカインに慣れ親しんでおられるかと思います。この薬は非常に長い歴史がありまして、つい最近までは日本で保健適用がある脊椎麻酔薬は、ネオペルカミンしかなかったのです。
ところが、去年の秋からマーカインという薬が出ました。あと、カルボカインという薬が、まだ保険適用が通っていないのですけれども出ています。実はペルカミン、つまりジブカインというのは使っているのは日本だけなのです。欧米でなぜ使わないかというと、これは神経毒性が強すぎて、脊椎麻酔に使うと馬尾症候群と言って例えば排尿ができなくなるとか、排便ができなくなるとか、そのような障害が頻発すると言われているのです。日本では最近になってやっと麻酔学会の働きで、ペルカミンをやめろとは言わないけれど少なくともペルカミン以外にもっと神経毒性の弱い薬を使用できるようにしようと、急速なスピードで治験が終わりまして、去年の秋からマーカインが認可されました。神経毒性を見ますと、ペルカミンは+++。実際に京大病院の関連施設でも、ペルカミンを使ったために排尿障害が出てしまった患者さんが私の知る限りで二人います。何千例、何万例の中の二人ですから少ないのかもしれませんけれども、そのような神経毒性があると言われている薬を使って、そのような不幸な症例が出たのは麻酔科としてとても残念なので、できればペルカミンはもう無くなってしまえと思うほどです。

 
マーカイン
マーカインという薬の神経毒性は絶対無いとは言えないのですけれども、ペルカミンに比べて明らかに弱い。効果発現はペルカミンに比較して遅い。持続時間はペルカミンと同じぐらいです。運動神経麻痺は弱いので、おなかが硬いという印象を持たれる術者もいるそうです。3番目のカルボカインですけれども、神経毒性はマーカインと同じぐらい少ないです。効果発現は早くて、ただし持続時間が1.5時間から2時間と少し短いです。ただし、帝王切開の方は1時間もあれば終わることが多いと思うので十分ではないかと思うのですけれど、京大病院では長引くこともしばしばあるので、使っていません。運動神経麻痺は強いので帝王切開にも使えると思います。ただし私はやったことがないです。
 
 
 

ペルカミン

マーカイン

カルボカイン

神経毒性

+++

+/−

+/−

効果発現

早い

遅い

早い

持続時間

3時間

3時間

1.5〜2時間

運動神経麻痺

強い

弱い

強い

 

<麻酔薬の併用>

・フェンタネスト:短時間で吸収されてしまう,呼吸抑制なし,局所麻酔薬量を減らせる
・塩酸モルヒネ:12時間以上にわたって効果が増強する,呼吸抑制あり,長時間の鎮痛

効果発現が遅いとか、運動神経麻痺が弱いとかというこのマーカインの欠点なのですけれども、これは最近の研究から、麻薬を併用することによってかなりの程度までカバーできるということが分かってきています。フェンタネストあるいは塩酸モルヒネをマーカインなりジブカインに、混ぜますと、局所麻酔薬の量を減らして、それでしかも効果を増強するという作用があります。フェンタネストの場合は短時間で吸収されてしまうので、手術の後に何か残って変なことをするということはありません。従って術後の呼吸抑制が無いですし、マーカインの量も減らせますし、非常に良い感じです。さらに塩酸モルヒネというのを添加することがあります。これをやると、カイザーの術後の痛みが非常に減るような印象があります。12時間以上に渡って効果が持続しますから、少なくとも次の日までは鎮痛薬を、かなり減らすことができます。ただし、モルヒネは呼吸抑制がありますので、量を間違うと大変なことになります。大体、1アンプルが10mgのアンプルなのですけれど、それの1/50を入れます。ほんの微量です。その他の術後鎮痛の必要ない手術、例えば、円錐切除の場合では、カルボカインを使えば非常に早く麻酔がかかってかつ、切れが早く、麻薬を併用することなくすぐに足が動いて、すぐそのベッドで歩けるようなというような麻酔も可能です。また、帝王切開で低血圧を心配される先生もおいでかと思いますが、麻薬を併用すれば局麻酔の量を減らせるので低血圧の頻度も減ります。

 

<副作用>

神経毒性,低血圧,頭痛
脊椎麻酔によって頭痛が起こる機序は硬膜に開いた針穴から、髄液が漏れて、それで立った時に特にその漏れがひどくなって頭痛がおきます。寝ていたら大丈夫なのですけれど、立つと頭が痛いという典型的な症状が起こるのです。これについては、針穴を細くするのが一番ですが、今のところ我々京大病院の麻酔科25ゲージを使っています。それでもやはり起こるので、外来手術の患者さんなんかでは特に頭痛が起こりますと、毎日のように、どうしてくれるのだみたいな感じで、電話がかかってきて、困ります。家に帰れば、例えば炊事とかしないといけないのですから当然です。私たちのほうが頭痛になります。
頭痛に対する完全な解決法はまだ確立していないということです。
 
 
 

<質疑応答>

司会
  何かご質問があれば。

‖質問


  非常に細かく、ありがとうございました。マーカインがいいということはよく分かったのですけれども、我々はペルカミンで慣れておりますけれど、その量ですとか、麻酔のレベルを調節する際に、ある程度こう傾けたらこのへんぐらいまでという経験則があります。マーカインだったらどのぐらいなのですか。



  それは非常にいい質問だと思います。我々もいろいろ試行錯誤をしておりまして、はっきりとしたやりかたを確立するまでには至っていないのですけれども、大体の目安を申します。マーカインは高比重と等比重の二つの製剤があるのです。高比重のマーカインはペルカミンとほぼ同じ使い方をしていただければいいと思います。頭を下にすれば上がってきますし、上がりすぎたなと思ったならばベッドを水平にするか足を下にしていただければそれで大体OKです。私はペルカミンの時は、カイザーですけれど、2.2CCを使っていました。高比重マーカインにしたら、それの1割か2割増し、例えば2.5ccぐらいで前と同じような麻酔ができます。等比重のマーカインを使う場合ですけれど、これは調節ができないのです。等比重ですから頭を下げても広がりません。もう最初の入れるときの運次第なのです。私の経験では等比重のマーカインは非常に使いにくいのでフェンタネストと一緒に使うというようなことをしない限りやめたほうがいいと思います。高比重のマーカインですと2.5ccで調節すれば、ほとんどの場合いきますけれど、等比重のマーカインで3.5cc入れてもレベルが上がりきらないことがあって、もう1回再穿刺ということが何回もありました。ただし、血圧の低下という面で見たら、等比重のマーカインのほうが血圧の下がりは少ないので、うまく使えば大変有用だと思います。ペルカミンと同じやり方で麻酔をされたいという場合はペルカミンの1割から2割増し程度の高比重のマーカインを使ってください。ほとんど同じ感覚で麻酔ができます。ただし、少し効果発現が遅いかもしれないので、少し待っていただかないといけないと思います。
質問
  フェンタネストを加える場合はどれぐらい加えていくのですか。
     
     
     


難波

  フェンタネストは、1/5アンプルすなわち20マイクログラム加えてください。
いまやっている感じで一番血圧が安定している麻酔方法はマーカインの等比重です。0.5%マーカインの等比重にフェンタネストを1/5アンプル加えて、それを3.5cc入れるというやり方が最も血圧が下がらないし、しかもレベルも比較的安定して、上がってきます。
‖質問

  ペルカミンSを使ってカイザーをやるとき、我々は1cc以上は使ったらいけないという規則がある。
経験上、確かに避妊手術と違いまして少量でやはりかなり効く。それは婦人科の教科書にも書いてあるのです。

◇難

波◇




  そうですか。確かに、台を操作すれば1CCでも効果はあると思うのですけれど、持続時間が短くなり、最後には痛がるかも知れません。
完全なブロックを2時間なり3時間に渡って実現しようと思ったら2CC以上加えられたほうがいいと思います。特に京大病院の場合は研修施設でもありますので、教えながらカイザーをしなければいけないので、ソリッドなブロックをかなり長時間に渡って保たせる必要がある事情があります。そこでマーカインの量としては京大病院で十分手術ができるためには、2.5CCぐらいです。施設によってこのあたりは変わってくると思います。
‖質問

  このときに、ペルカミンを普通の量の半分の量を使った点で言われたのですけれども、そのへんから少なく使うというのが普及して、私たちも最初1.3ぐらい。それから、話がそれるのですけれど、私のところに入れているマーカインは0.25%までなのですけれども。



  0.25と0.5%あるのですけれど、それは金属の蓋が付いているバイアルに入っているもので、あれの中には防腐剤が入っているので、脊椎麻酔に使用することは一応禁止されているのです。もちろんやってもいいのですけれど、何かトラブルが起こった時にそれはメーカーのほうで保証されていない使い方をしたのでそれは責任を取れませんと言ってくると思います。
今回、認可されたのはアンプルなのです。防腐剤が入っていないのです。
濃度は0.5%だけで4CC入っています。

     
質問
  防腐剤入り麻酔のマーカインのバイアルは使わないほうがいいということですね。
それと、ペルカミンなんかでは長く効かすために、ボスミンを入れる時がありますが・・・。

  マーカインの場合にはボスミンを加えても延長しません。ですから、効果を持続させるには麻薬を加えられるのが一番確実です。ただ、その使い方が少し微妙なので、慣れていらっしゃらないと少し怖いかもしれないです。ペルカミンは確かに先生がおっしゃる通りに効果延長します。
質問
  それから、セボフルレンの使い方です。あのへんは5とか3とか、5かな。
◇難波◇   5が最高目盛りなのです。5の最高目盛りでガスとかが出て1分以内に麻酔をかけます。寝てからは手術に必要な麻酔の量は2とか1.5なのでそこまで下げます。
‖質問

  そうですか。その後、寝たらもう下げるのですか。
酸素はどのぐらい。

  少量でもやはり臭いのは臭いのでなるべく患者に与える苦痛時間を短くするために高濃度で麻酔を導入して、必要がなくなったらさっと下げるというやり方でなるべく体に投与する麻酔薬の量を減らすようにします。
酸素は一応3リットルというふうに決めていますけど、6リットルでもいいです。
‖質問

  笑気は全然関係ないですか?

  笑気は使っていません。もちろん笑気を使ってもいいですけれど、京大病院では空気の配管がありますので、空気を3リットルと酸素を3リットルで合計6リットルで手術します。
質問
  そうすると、空気の回路が、ついていない麻酔器ではどうしたらいいのですか?
◇難

波◇

  それは酸素だけでやっていいと思います。
酸素6でも3でもいいです。酸素と笑気の組み合わせというのが、一般的に使われていますが、京大病院では少し使うと手術の後にむかつく人が多いというデータがありますので、酸素と空気でします。
質問
  空気はボンベで売っているようなものがありますか?
難波   あのようなものを何で売らなければいけないと思うけど……あります。(笑い)
     
     
‖質問

  笑気の場合、麻酔を切った後、酸素マスクをしないといけないですね。
空気でやった場合もですか?
◇難波◇   必要ないことが多いです。
     
     
質問
  ラリンゲルマスクにはサイズがありますか。

  ラリンゲルマスクはチューブのところのサイズは無いです。全部同じなのです。マスクの部分にはサイズが1から5まであります。女の人では欧米人では4を使えと言っていますけど、日本人では3です。子宮鏡の手術では、ほとんどの症例で3です。もちろん口が小さいとか、何か異様な口をしているとか、あるいはひどい小人症とか、あるいは大きな女とかあるでしょうから、それだったら4にしたりとか2にしたりとかあるかもしれませんけれど、ほとんどの成人女性では、3で問題ありません。
質問
  そのような場合、静注でディプリバンというのを使ったりしたら、どうでしょう。
◇難波   あれはいいですね。非常にいい薬だと思います。
質問
  目覚めが非常に早いですね。




◇難

波◇



  早いですね。それでもいいと思います。ただし、セボフルレンと比べてディプリバンの特徴は結構痛みに弱いというか、セボフルレンには鎮痛作用があるのですけれどディプリバンには鎮痛作用が無いので、子宮鏡のような一時的にせよすごく痛みを伴う処置の仕方はディプリバンでこれをやりますと、途中で足をバタバタさせて術者が困ると思います。鎮痛剤を使うと、ましかと思います。
外来手術の根本はなるべく薬を減らして、おくことなのです。例えば悪心・嘔吐が来たときにもしかしたら鎮痛薬のせいかもしれない、もしかしたらディプリバンのせいかもしれない、もしかしたら何々のせいかもしれないみたいな、何か訳の分からない状態にするのを防いで、もうクリアカットにこの薬しか使っていないのだから副作用だったらこの薬のせいに決まっているみたいな状況を作っておくわけです。そうしたら、もう機械的にすべてのことに対処できます。そのようなシステムを作りたかったので、単体で外来手術、デイ・サージャリーをするということを考えた場合、セボフルレンが最も適しているからだと思うのです。
     
   
質問
  実は、私たちは仙麻を併用してます。あれに局麻とディプリバンといった感じです。

  なるほどね。局所麻酔を効かせればそれで鎮痛がとれますから、ディプリバンで十分いけます。ですから、この子宮鏡の例えば傍頚管ブロックを併用すればディプリバンでできると思います。十分可能だと思います。ただ、それを術者に頼むか、あるいはセボフルレンでこちらで自前の鎮痛作用を与えてあげるかというのを考えたら、麻酔科だし、きちんと鎮痛作用を与えたほうが術者は楽だし、早く済むと考えています。ですから、その組み合わせならバッチリです。間違いなく手術は成功します。

‖質問

  先生、もう一つ。確認だけしておきます。セボフルレンの維持のパーセントというのは3%ですか?
脊椎麻酔をしまして、例えばATとかするときに、まだ効きが悪いというときに、このようなのは補助的にというか、セボフルレンをかますときにでも、多分3%以下だとそれほどきつい舌根沈下とか何かそのようなことはあまり起こらないのですか?








  それは手術の内容によるのですけれども、子宮鏡の場合で言いますと、2%から3%でいけます。5%で導入して2%から3%、大抵の人は2%でOKです。
脊椎麻酔がナマ効きになっている場合というのは、麻酔に対する感受性が上がっているのです。そうなので、どこまで効いているかによるのですけれど、大抵の場合は非常に少量から始められたほうがいいと思います。ですから、このデイ・サージャリーの子宮鏡は脊椎麻酔を全く使っていないのです。ですから、その意味で3%でも、2%、3%でいけるというか、舌根沈下も起きますけども大したトラブルもなくいけてますけれど、脊椎麻酔の場合は、麻酔薬に対する感受性が非常に高くなっていますから脊椎麻酔でソセゴン、セルシンをやる場合、非常に少量の薬を使わないと危ないです。さっきの症例で15mgのソセゴンと5mgのセルシンでスタートして足りなかったら、もう5mgセルシンを追加していますよね。あれを脊椎麻酔でやるともっと大変なことになると思います。私が脊椎麻酔の生身の患者の麻酔管理を依頼されたらソセゴン7.5mgからスタートします。それで、まだ駄目だったらセルシン5mgを足すというようなやり方でいきます。
‖質問

  先生、もう一つ。ペルカミンショックというのです。
いや、ペルカミンショックというのは、怖い目に遭ったことがあるのです。
◇難波◇   それは脊椎麻酔によって血圧が下がってということですね。
‖質問

  ええ、血圧が下がって。量もそれほどたくさん使ったわけでもないのですけど。
マーカインの率的にはどうでしょうか?



 

  1CCですよね。
高比重マーカインを使った場合はペルカミンとほとんど同じだと思って下さい。その血圧低下に関しては、カイザーの場合ですと、あれは仰臥位低血圧症候群といって下大静脈が押されることによるので、ペルカミンからマーカインに変えたところでそれは防げないのです。ただ筋弛緩作用が少し弱いので、その分子宮の弱点というか、下大静脈に対する圧迫が少し弱いかなというのを期待しているのです。実際に等比重のマーカインを先ほど申し上げたような使い方をすると、かなりマシです。ペルカミンを使っていた時代よりも低血圧でエフェドリンを入れなければならない事態は少なくなっています。高比重マーカインはややマシのはずだと思っていたのですけれど、実際にやってみるとやっぱり血圧が下がります。
‖質問

  先生、もう一つ、ラリンゲルマスク。多分、看護婦さんがさっき麻酔のゼリーですよとか何とか言っていたのですけれど、あれは何か塗って入れるのですか?

  そうです。あれ、滑らないと口の中で引っかかってしまうのでラリンゲルマスクの背中の側にゼリーを塗っているのです。キシロカインゼリーでなければ苦い感じはしないのでいいなと思いますけど、手元にあるゼリーはキシロカインゼリーしかありません。それで滑りをよくして、ギュッと押し込んだらスポッと入るように工夫というか、そうしなさいと説明書に書いてあります。


‖質問


  子宮鏡とかD&Cに全身麻酔を使うのは非常にいいと思うのですけれども、保険の問題で、保険の伝票の注意書きを見るとD&Cの点数を超えるような医事報告は好ましくないと書いてあるのですが、多分全部やったら返ってくるのではないかなと思うと、全身麻酔管理をどうしたらいいのか。京大の場合は、あれは短期手術だから短期滞在手術基本料がとれるのでしょうか?
あれをやっていると思うのですけれども。そうでなかったら、下手したら全部返ってくるかなと。かもしれませんね。
     
     

難波
  短期滞在手術基本料がとれる手術では、算定しておりますが、子宮鏡については、そこまでは全然考えていません。ありがとうございます。
司会   どうも先生ありがとうございました。おもしろいお話を聴かせていただいて、実際にやってみたいと思うのですけれども、質問させていただく事もあるかと思います。・・・・・(拍手)