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流産をめぐって

小阪産病院 院長  竹村秀雄 先生

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妊娠と染色体異常について
経膣超音波では、4週の半ばくらいからGSが見え出し、卵黄嚢は5週前後から、心拍数は5週の半ばから6週にかけて見え始める。脳の構造は7週くらいから見え始める。
<妊娠初期の超音波検査>
1、妊娠の証明
2、胎芽・胎児の成長
3、胎児形態異常
4、流産とその類症
5、子宮外妊娠
6、子宮奇形と骨盤内腫瘤
<経膣エコーで観察した妊娠初期発育段階>
臍帯ヘルニア
四肢 点状 棒状 屈曲
運動
手指
脳構造 単一脳胞 大脳鍵・脈絡嚢
心拍数 110 130 150 170 180 170 160 150
卵黄嚢 3o 4o 5o 5.5o
胎嚢 胚外体腔 羊膜腔
妊娠
週数
4週
6週


10
11
12
<流産とその類症>
1、枯死卵
2、胎芽・胎児死亡
3、Preclinical Abortion
4、胞状奇胎
<染色体異常妊娠卵の発生と出生前淘汰>
染色体異常卵子 染色体異常精子
25% 受精経過での
染色体異常
10%
8%
受精時 40%
着床前妊卵 25%
妊娠初期 10%
妊娠中期及び後期 0.6%
新生児 

染色体異常の胎児が淘汰されていく、
要素をしめているのでは?
胎児になんらかの染色体異常が生じる頻度

妊娠年齢が高くなるほど胎児に染色体異常が発生する率が高くなる。
30代後半から40歳くらいに妊娠された妊婦は、
そこに至るまでに不妊治療などを行っておられるケースが高い.
その中で流産されてしまう残念なケースもある。
<流産と染色体異常>
超音波診断(経膣法) 正常抗型 染色体異常 染色体異常の頻度
枯死卵 17 85.0%
稽留流産(CRL<30o)
10週以前
18 30 62.5%
稽留流産(CRL≧30o)
10週以後
0%
29 47 62.7%
増崎英明:長崎大学
<妊娠初期異常>
1、多胎
2、流産
3、胞状奇胎
4、子宮外妊娠
6、子宮・卵巣異常


<超音波所見と流産率>
胎嚢のみ確認 13.4%
卵黄嚢が見える 10.5%
胎芽≦5mm 9.2%
胎芽6〜10mm 5.5%
胎芽>10mm 2.5%
14〜20週 2.0%

<胎芽像未確認児の予後判断>
胎芽像(−)
     ┏━━━━┻━━━━┓
GS径>16mm GS径<16mm
  ┏━━━━━━┻━━━━━┓
胎芽死亡 卵黄嚢(+) 卵黄嚢(−)
  ┃       ┏━━━┻━━┓
  ┃ GS径<8mm GS径>8mm
  ┣━━━ ━━┛    ↓
  ↓ 胎芽死亡
follow up

<症例> 5週で経膣超音波により心拍が確認できた。6週で卵黄能嚢が大きく気になっていたのだが、
8週になって心拍が消失していた。絨毛染色体検査で、13 トリソミーであったことがわかった。

<胎芽・胎児心拍確認後の流産>
1989年 1991年 1992年
妊娠診断数 1523名(100%) 1691名(100%) 1831名(100%)
A:自然流産数 181名(11.9%) 221名(13.1%) 203名(11.1%)
B:自然流産のうち
心拍(+)→(−)
44名
(2.9%)
71名
(4.2%)
73名
(4.0%)
B/A 24.3% 32.1% 36.0%
妊娠診断数は中絶希望を除く

<胎芽(児)像確認後の予後判断>
胎芽(児)像
┏━━━━━━━┻━━━━━━━┓
胎児心拍(+) 胎児心拍(−)
┏━━━┻━━━┓ ┏━━━┻━━━┓
CRL>5mm CRL<5mm CRL>5mm CRL<5mm
  ┏━━━┻━━━┓
Follow up 胎児死亡 Follow up
卵黄嚢正常  卵黄嚢異常 ━━━━━━━━━┓
┏━━━┻━━━━━━━━━━━━┓




GS径−CRL>5mm GS径−CRL<5mm ハイリスク例として厳重にFollow up
  ┏━━━┻━━━━━━━━┓
心拍数正常 心拍数異常
Follow up


<経膣超音波による初期妊娠の予後判定>
心拍確認週数 性器出血
 あり なし
6週まで  33% 16%
7〜9週  10% 5%
9〜11週  4% 1〜2%

<絨毛膜下血腫 Subchorionnic Hematoma>
絨毛膜下液体像 Subchononic Fluld(ScF)→経腹エコーで35% 経膣エコーで50%
絨毛膜下出血 Subchorionic Bleeding(ScB)→カラードプラでScFの47%
流産率との関連
 ・ScFが経腹エコーで大きく見える  の場合のみ有意に高い
 ・性器出血を伴う
 染色体異常との関連はなし
軽症絨毛膜下血腫は、正常分娩の可能性が高いが、性器出血が長期間続く重症であれば切迫早産となる可能性が高い。
<Preclinical Abortion>
定義:尿中・血中HCG値より妊娠と推定しながらGS、排出物検査で妊娠を確認できないもの。
用語:Preclinical Pregnancy Loss  Early Postimplantation Embryo Loss  Occult Pregnancy,
Chemical Pregnancy

    未確認流産、潜伏流産
頻度:7.6%(Wittecker `83) 22%(Wilcox `88)32.3%(Miller `80) 45.8%(Edmonds `82)
<Preclinical Abortion (Chemical Pregnancy)>
・無月経:最終月経後 4〜6週
・HCG値:尿中50〜200 IU/L
血中  〜600 mIU/mL
・内膜肥厚度:15〜25mm(高輝度)
・GS:0〜1.5mm
・血液:月経量〜脱落膜排出(絨毛組織なし)
画像
症例:40歳で7週で胎児が小さい。羊膜と卵黄嚢の大きさがほぼ同じくらいの大きさ。袋が2つあって心拍がみえない。予後が悪いと考えてもよいのでは。
画像
症例:30歳で稽留流産。二重に袋が見えている。
画像
症例:11週で無頭蓋症、脱脳症。
画像
症例:12週で脱脳症、腹壁破裂。
<経膣エコーによる妊娠の予後予測>
1.GS>20mm 卵黄嚢 (-) ・・・予後不良
2.GS>25mm 胎芽・心拍(-)
3.胎児心拍 (+)→(-) ・・・予後不良
4.胎児心拍 ; 週数に比し徐脈 ・・・予後注意
5.Small Sac ; GS<CRL+5mm ・・・予後注意
6.卵黄嚢 ; 異常に大 ・・・予後注意
7.絨毛膜下血腫 増大傾向、外出血 ・・・予後注意
流産された患者への心遣い
<流産へのガイドライン>
 自然流産や妊娠中絶によって妊娠を継続できなかった両親は、死産や新生児の死亡後と同様に深い悲しみを感じており、その悲嘆の期間も延長することがあるという事実を認識することは重要なことである。
(王立産婦人科医会周産期死亡の取り扱いに関する専門委員会報告、1985年)
<先天性異常児を亡くした両親の反応パターン>
死亡した直後は、ショックを感じ。時間の経過とともに、拒絶・悲しみと怒りとなり、均衡から再編成へと進んでいく。

内診台の上での不用意な一言で、患者は頭が真っ白になってしまい、口頭での説明を聞いてもらえなかった経験から。手渡しの書類を用意して、正確な情報をつたえるようにしている。
又、「流産手術・人工妊娠中絶をお受けになる方へ(未分娩の方)」という、クリニカルパスを作成している。
元気な赤ちゃんの誕生を楽しみにしてこられた貴女には大変申し上げにくいことですが・・・。
1、本日の診察と検査で、次のようなことが分かりました。
  a.子宮内に胎嚢(胎児を含む袋)が見えない。
  b.子宮内に胎嚢はあるが、その中に胎児が見えない。
  c.胎児は見えているが、心拍が見えない。
  d.前回まで見えていた胎児の心拍が消失している。
  e.その他(                         )
2、上記のことから、次のように考えます。
  a.妊娠週数が不確実なので、確かめていく必要がある。
  b.胎児生存の確実な証拠が得られない。
  c.胎児がなくなっている、又はその疑いがある。(稽留流産)
  d.胎児が子宮の外へ出てしまった。(完全流産、不全流産)
  e.子宮外妊娠の疑いがある。
  f.その他(                         )
3、今後の方針としては
  a.(  )日後に再度検査をして確かめましょう。
  b.妊娠根拠は難しそうですが、念のため(  )日後に再検します。
  c.流産手術が必要です。ご家族ともご相談の上、予約して下さい。
  d.すでに流産してしまったようです。安静に心掛け(  )日後に経過を見せて下さい。
    (出血、腹痛、発熱はご連絡下さい。)
  e.子宮外妊娠の疑いがあります。(入院検査  日後再検)しましょう。   

流産について
<各症例群について>
子宮内容清掃術施行例 自然流産経過観察例
症例数 27 73 NS
年齢 30.8±5.2 30.5±4.4 NS
妊娠回数 2.4±1.5 1.9±1.1 NS
経産回数 0.7±0.8 0.6±0.6 NS
平均子宮内容清掃施行時
又は自然排出字平均週数
9週4日
(67.0±12.9日)
8週6日
(62.4±12.8日)
NS
福本由美子:「稽留流産及び枯死卵症例の取り扱い」より
自然経過観察だけで済んだ症例より、ソウハをする症例は週数が高い。
血中hCGが順調に下がっていけば、手術する必要はない。血中hCGがなかなか下がらないものは、手術が必要。
経過に差がないが、満足度は、ソウハをしない症例のほうが高いという文献がある。
人工妊娠中絶・流産・子宮外妊娠であれ、コリオンが体外に排出されてしまえば大丈夫である。
流産の経過が心配であれば、血中hCG値や経膣超音波で観察して判断すれば、手術の必要有無がわかる。
質 疑 応 答
司会 何かご質問はありますか?
質問 性器出血があったり、絨毛膜下血腫などがあり、赤ちゃんの心拍がみえている場合、CRLも順調に大きくなっている。そのような切迫流産の治療はどのようにされていますか?


 出血が続いている方は、一応、入院をすすめています。どうしても入院がいやであれば、自宅で安静にしてもらうようにしています。入院してなにもしないわけにはいかないので、デュファストンなどを飲ましたりしています。いわゆる絨毛膜下血腫に関しての積極的な治療ということは、あまりできません。
一ヶ月くらいたって減ってきてない場合、あきらめますかというと、あきらめるのも入院も辛いということで、帰ってもらい、止まった人もいます。また、止まったといって帰ってもらうと、一週間ぐらいして、また出てきて入院という人もいます。
アスピリン療法をする人もいます。ステロイドを使ってみることもあります。意外とステロイドが効いたかなと、自然に止まったのかなと、思うこともあります。患者さんに話して、貴方の場合手詰まりだと、それでステロイドを飲んで止まった場合もあります。
ネラトンで吸引して治療したいと思うこともあります。岡井先生が薦めていた時期もありましたが、開業医として積極的な治療をする気持ちにはなれません。
質問 絨毛膜下血腫の場合、抗生物質は使用されてますか?感染が怖いので・・・


 とくに感染兆候がなければ、使っておりません。膣内の細菌培養も行っておりますので、それで菌がみつかった場合は、使っておりますが、絨毛膜下血腫だけでは、使っておりません。


ディアストン等を使用していますが、バファリンは、お使いになりますか?習慣性流産の場合、阪大病院などは、必要な人には使っておられるようですが・・・習慣性流産などの場合は、阪大病院にお願いしていますが。長期にアスピリンを使うような、症例はもっておりません。
漢方の23番、当帰芍薬湯などは、使われたことありますか?


 使ったことありません、どなたか使ったことありますか?効果があるようでしたら使ってみたいのですが。
開業医で入院していて何も薬を出さないということは、非常に難しいことで、悩む処です。特に薬剤師からは投薬指導管理料を、薬剤師さんにとっては大きな魅力があることですから、薬をださないとiいけないかと思います。私のところは薬剤師が看護婦といっしょに回診について回るものですから。


先生の講演を何回かお聞きしまして、卵黄嚢が大きいと、流産になりやすいと、確かにそういう傾向はあります。なぜ卵黄嚢が大きかったら、流産になるのか?


 初期の頃、卵黄嚢に関する論文がでていたのですけど、最近はあんまりでません。関係がないということが言われたので、鎮火してしまったのだろうと。卵黄嚢というのは、胎芽が見えてくる前にはっきり見えて、初期の発生では重要な役割を果たしているものだと、思っています。要注意のサインだと思っています。心拍が喪失したら、言うようにしています。卵黄嚢が大きいから流産するかもしれないよと、うっかりいいますと、もしそれが育った場合に、もし何か奇形でもあった場合、なんでいってくれなかったといわれてしまうことに、なりかねないので、いわないように心がけています。


血中のhCG濃度を計られているということですけど、開業医では、hCG濃度をリアルタイムにだす事は難しいのですけど、どのようにされているのですか?
検診料の時にどのようにされているのですか?


 保険のことは、あまり自信がないのですが、あまり削られていないようです。子宮外妊娠の疑いとして請求します。切迫流産だけでは、どうでしょうか。。。無理かもしれないですね。
私どもでは、院内検査室をもっておりますので、2・30分で計ってくれますので、これはと思う症例は、すぐ結果がでて来ます。今日お話した症例は、尿中と血中と両方計っていて、かなり古い症例で、あの当時はどの位並行するかと思っていまして、きれいに平行しますので、尿中で十分かと。ただ尿中は少し前(昨日の)の情報で、血中は今のリアルタイムで、上がっていく時・下がっていく時で少し違うように思いますが、かなりきれいに平行します。全部血中で計る必要はないと思います。
初めの頃は、血中何ミリあれば、GSが見え出すかと、興味をもってやっていたので、初期の頃のGSと、HCGとの値、論文もたくさんありますが、1000〜2000、血中HGで1000でだいたい見えると思います。2000で見えなかったらおかしいと、外妊娠の診断によく用いられております。血中でも尿中でも2000あって、GSが見えなかったらソウハをしてみて、子宮の中にもしあれば、下がるはずですが、下がらなければ外妊娠の疑いが高い。
もちろん、腹腔鏡をやればいいのですが、我々はなかなか腹腔鏡は、簡単に行うことができませんので。


妊娠でこられて、最近では妊娠反応をやってこられて、だいたい4・5週でこられてます。私の場合は、GSを確認して心拍を確認しています。だいたいこられるのが4・5週で、2週間毎に検診し10週くらいでCRLを計ります。10週までは2週間毎に通院してもらっています。妊娠初期の場合、先生のところではだいたいどのくらいの週で受診してもらっていますか?


 教科書的には、妊娠初期には4週間に1回ですが、今の時代に4週くらいでGSがみえたからといって、4週後に来なさいというのは、いささかと思っています。心拍が確認できてからも、10週までは2週毎にきていただいて、10週前後でスクリーニングして、心拍も確認できたら、CRLも10週で確認できたら、4週の受診で行っています。妊娠反応が+になってGSが見えない場合は、状況にもよりますが、外妊娠が疑わしくない場合は、だいたい3・4日後にきてもらったり。外妊娠が怪しい場合は、血中hCGをみて、次の日にきてもらったりしています。GSが確実に見えたら、4週の半ばでGSがみえて、6週の半ばで心拍が見え出すまでは、10日後くらいにきてもらったり、柔軟におこなっています。ドクターによってですが、2週間以上あけている人は、いないですね。10週すぎたら4週間にしています。


非常に患者さん思いの先生で、それに関する講演を数回聞かせていただいたのですが、私の医院では内診の横にモニターを置いていまして、心拍確認して、12週前後で受診してもらって、出血などがあって、これは異常だなぁとモニターをみて、正直に心拍がみえない、えらいこっちゃと、いってしまうのですが・・・もちろん状態が良ければ、心拍が見えるから大丈夫だよともいいます・・・ちょっとやりかたが悪いかと反省しているのですが?


 うちの病院でも、エコーのモニターは患者さんから直接みえるところに置いています。両方からみているのですけど、説明すれば解るとおもうのですけど、そのとき写真を撮りますから、あとで説明しています。
患者さんとのコミニュケーションが、親近感が十分であれば、大丈夫だと思います。


最近では、妊娠反応がすぐにわかるので、おかあさんになれたと、喜んで受診にこられている患者さんに、流産など、悪い状態を話してしまうと、内診台で泣かれてしまって・・・


 流産というものは、みなさんが思っているより、ずっと頻度が高いもので、その原因は主として染色体異常が多いということで。患者さんに説明しています。

一回流産されて、患者さんは原因をしりたがるのですが、その後どのような対応・検査をされていますか?


 流産に関する検査は、なかなか大変で。若い方でも三回流産している人もいたりします。年齢の高い方では、それに対応できる病院を紹介させていただいています。
患者さんにも、よりますが、若い患者さんには、今回は残念ながら流産してしまいましたが、あなたは妊娠できるということを立派に証明されたのだから、妊娠しなかったより、ずっといいのだよ。自信を持ってちょうだい、妊娠できる身体なのだから、ということを強調しているつもりです。今回の妊娠によって大量のホルモンが、子宮や卵巣を成長させたのだから。流産して妊娠しなかったほうがいいと思わないように、できるだけ勇気づけるように、話しているつもりです。たとえば不妊症の治療をされて流産なさった方とか、リスクの高いとおもわれる方にも、それなりに対応しているつもりです。とにかく、今まで苦労してきたと思うけど、ちゃんと妊娠できたのだから、きっと次はうまくいくと思いますよと。

絨毛の染色体検査は、いつもやっておられるわけではないのですか?


 たまたま、やったものをお見せしたわけで、それが次回に妊娠にどれだけ役にたつかということで、ハイリスクの方には、こういう方法もありますよと。ただ、次の妊娠に役立つか、どうかはわかりませんが、ご希望なら行いますよと。患者さんの選択に任せているつもりです。
司会 先生、どうもありがとうございました。