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女性に見られる皮膚病変の診断と治療
京都大学大学院医学研究科皮膚病態学  立花 隆夫 先生
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日本皮膚科学会、日本皮膚外科学会、日本臨床皮膚外科学会、日本アレルギー学会
下肢静脈瘤について
はじめに
 下肢静脈瘤に対し、従来は弾力ストッキングによる保存的治療と静脈抜去術(ストリッピング)による観血的治療しかなかったが、平成6年4月に「下肢静脈瘤硬化療法」として保険適応されてからは硬化療法も本邦で盛んに行われるようになった。
 硬化療法単独の適応は中等症までの静脈瘤とされる。しかし、これまでなら適応とならなかった重症例に対しても、静脈抜去術と硬化療法の併用、さらには、高位すなわち大伏在(ないし小伏在)静脈本幹の結紮術と硬化療法の併用、あるいは、血管結紮術併用硬化療法などの治療法が新たに実施されるようになった。
 今回は、当院(京大病院)で行っている「血管結紮術併用硬化療法」の適応と手技について説明する。
下肢静脈瘤とは?
 下肢の表在静脈が太く浮きでてみえるのが静脈瘤であり、硬化療法の適応となる一次性静脈瘤のほかにも、先天性形成異常や深部静脈血栓症などに続発する二次性静脈瘤がある。一次性静脈瘤の成因には、表在静脈あるいは交通枝の弁不全のほかにも静脈壁あるいは周囲支持組織の脆弱化、A-Vシャント説などが指摘されている。
静脈瘤の分類
 肉眼形態から、伏在静脈瘤(saphenous type)、側枝静脈瘤(segmental type)、網目状静脈瘤(reticular type)、クモの巣状静脈瘤(web type)の4種類に分類される。
静脈瘤の症状
 全く気付かないこともあるが、足がむくむ、だるい、重い、ほてるなどの症状がみられ、足の筋肉がつるといった「こむら返り」も起こりやすく、さらに症状が進むと湿疹、色索沈着、潰瘍なども生じ、女性では美容的な悩みの原因にもなる。
下肢静脈瘤の診断
 クモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤は視診だけで診断できる。また、下肢静脈瘤の治療を希望して来院する患者のほぼ9割にあたる側枝静脈瘤や伏在型静脈瘤でも、立位になると自然に静脈の拡張〜怒張が生じるので診断は容易である。
 なお、発症年齢、分娩経験、外傷の有無、あるいは、立ち仕事をしているか、肥満はなかったか、家族内にはなかったかなどの現病歴、既往歴、家族歴の問診は重要であり、先天性形成異常や二次性静脈瘤との鑑別に役立つ。
血管結紮術併用硬化療法とは
 静脈瘤の血管内に高張食塩水(あるいはポリドカノールなどの硬化剤)を注入して血管内皮細胞を傷害し、管腔を癒着させ拡張した血管を閉塞させるのが硬化療法の目的であるが、硬化療法単独の適応は中等症までであり重症例では再発がみられる。
 しかし、事前に弁不全のある伏在静脈や交通枝の血管結紮術を併用することで、静脈抜去術併用硬化療法と同等の硬化が得られると共にデイサージェリーが可能となった。
静脈瘤の発生
 多くの静脈瘤は、表在静脈(とくに大伏在静脈)の弁が壊れるため発生する。弁が正常に働かないと、血液は逆流することになり、下腿皮膚に血液がとどまる。その結果、静脈は拡張し、静脈瘤ができて来るのです。

 ■正常
 正常な弁の働きで血液は上へ流れる。
 ■静脈瘤
 静脈の弁が壊れると血液は逆流し、その下は静脈瘤となる。

血管結紮術の手技
 伏在静脈瘤では、伏在静脈の弁の障害による逆流のために静脈瘤が発生する。硬化療法で静脈瘤を治療しても、根本的原因の伏在静脈の逆流を放置すれば再発の危険が高い。そのため、伏在静脈を結紮し逆流を止める方法がとられている。

(1)静脈瘤の中に硬化剤を注射する。
(2)乾綿などで作った枕子(ちんし)をおき、さらに圧迫することにより静脈瘤をペシャンコにする。

 他の施設では高位結紮術
(Saphenofemoral junctionの結紮)だけを行うことが多い。

 しかし、当科では結紮術に先立ち血管走行をドプラー血流計で検索すると同時に、Perthes検査で深部静脈血栓症を否定すると共に、ミルキングテストを行うことによりSaphenofemoral junction以外の不全交通枝も併せて検索し、他に不全交通枝があると同時にその全てを結紮している。
下肢静脈瘤の検査
 検査の目的は一次性静脈瘤と二次性静脈瘤との鑑別であり、一次性であれば治療法の選択のために逆流の検査や不全交通枝の部位確認のための検査を行う。
 また、特別な機器がなくても駆血帯さえあれば、Trendelenburg検査(弁不全の有無)、Perthes検査(深部静脈の血栓、閉塞の有無)、ミルキングテスト(不全交通枝の有無)などを行うことでも検査は可能であるが、弁不全のある正確な部位を検索する場合や深部静脈血栓の疑わしい症例には、超音波ドプラー血流計による検査、さらに超音波断層法や下肢静脈造影などを行う。
血管結紮術
 立った状態で怒張した静脈の走行に沿ってマジックインクで印をつけ、ドプラー法などで弁不全のある部位を確認した後、手術室に移り逆流のみられる大伏在大腿静脈接合部(Saphenofemoral junction)や小伏在膝窩静脈接合部(Saphenopoplitealjunction)、あるいは、Dodd、Boyd、Cockettなどの不全交通枝も併せて結紮する。
不全交通枝(Boydの交通枝)の結紮術 大伏在大腿静脈接合部(Saphenofemoral junction)の血管結紮術(高位結紮術
 12時の方向にみられる交通枝とそれにつながる表在静脈がT字を形成している。  12時から時計周りに大伏在静脈、浅腸骨回旋静脈、浅腹壁静脈、外陰部静脈、および、外陰部静脈分岐後の大伏在静脈を示す。なお、その全てを絹糸で結紮する。
硬化療法(1)
 立位で静脈瘤の数箇所に硬化療法用の翼状針を刺入した後、仰臥位(あるいは腹臥位)にさせる。
 次に下肢を挙上させ、また、炭酸ガスを注入して余分な血液を血管腔から追い出すと同時に翼状針が正確に静脈内に入っていることを確認した後、14.6%高張食塩水(コンクライト・Na)を1ヵ所につき約0.5〜1mlずつ注入する(1肢あたり6〜7mlにとどめる)。

硬化療法(2)
 その後素早く枕子としての乾綿を血管走行に沿って置き、その上から弾力包帯(あるいは弾力ストッキング)を足から下腿、大腿にかけて巻きつけ、すぐに深部静脈血栓の予防と疼痛緩和の目的のため20〜30分程度歩行させる。
 また、1週間後に結紮した部位の抜糸をし、その後2週間は昼間だけ弾力ストッキングを着用させる。なお、静脈瘤が残るようなら繰り返し行う。
硬化療法の副作用 血管結紮術併用硬化療法の副作用
 硬化療法に伴う副作用としては、瘤内血栓形成、色素沈着、注射部位の浮腫、皮膚潰瘍・壊死、水泡形成、圧迫によるびらんやかぶれ、多毛、ショックなどが知られている。しかし、多毛やショックはポリドカノールなどの硬化剤を使用した場合に生じうるが、高張食塩水では注入時に疼痛を伴うものの認めない。また、重篤なものとしてごく稀であるが、硬化剤の深部静脈への高濃度流入による深部静脈血栓症とそれに引き続いて肺塞栓症を生じることがある(5,000〜10,000人に1人程度)ので注意が必要である。  下肢の静脈環流に占める表在静脈の割合は10%程度に過ぎないので、結紮術あるいは静脈抜去術を行っても環流障害は生じない。また、深部静脈血栓症による二次性静脈瘤はこれら観血的治療の適応外であり、深部静脈不全から生じる二次性静脈瘤に対して効果が認められない。生じうる弊害として、静脈抜去術では出血や血腫形成、伏在あるいは腓腹神経の損傷などが指摘されているが、無血手術を原則とする血管結紮術では出血や血腫を生じることはほとんどなく、神経損傷も注意して行う限り生じることはない。
外陰部皮膚疾患について
プライベートパーツの特殊性
●患者は見せたがらない
「内陰部」より「外陰部」のほうが恥ずかしい
●他人と比較できず異常と思い込む
性感染症ではないかという背徳感
●医師もじっくり観察しない
見逃される皮膚疾患も多い

「今回、女性のプラベートパーツ、すなわち、外陰部にみられる悪性腫瘍、性感染症、炎症性皮膚疾患をスライド供覧させて頂きますが、諸先生方の診療の一助になれば幸いです。」

プライベートパーツに悪性腫瘍あり

●外陰部パジェット病
 最も見逃されている皮膚悪性腫瘍 「湿疹」、「いんきん」と誤診されることが多い。患者が独自で判断し、OTC薬を購入し、数年経過させてしまって、悪化させてしまうこともある。

●扁平上皮癌
 初期には、特異な症状を呈することがある(紅色肥厚症、白板症など)。
 また、恥ずかしいので巨大になるまで隠している。

●悪性黒色腫
 外陰部にも生じうる。
外陰部パジェット病の手術
 病変は紅斑・脱色素斑・色素沈着などであるが、パジェット病の病変部は、肉眼的なものと病理的なものとは一致しない。そのために、取り残しが生じないようマッピングという方法を行っている。また、セーフティマージンを2〜3cmとった切除範囲としている。なお、肛門に生じた場合は人工肛門造設術が必要となるが、希望者や高齢者には放射線治療も行っている。しかし、放射線治療の場合は、表層病変でありかつ入り組んだ部位でもあるので、3〜5年レベルでは再発がなくても、5〜10年のレベルでみると局所的に再発を見ることが多い。
扁平上皮癌について
 紅色肥厚症や白板症などの初期病変で受診される場合は、手術などで取り除くことができる。
 しかし、患者さんの中には、受診を恥ずかしがり病巣が進行してしまうまで受診しないことが多く、また、患者の家族も気がつかないまま放置されている場合もある。
悪性黒色腫について
 外陰部や肛門の中にも黒色腫は発生しうるので、注意が必要である。
プライベートパーツに社会の縮図あり
性感染症、性的虐待
性器ヘルペス
・STDのひとつで、ほとんどが性行為で感染する
 ・HSV-1による被感染は重症化することが多い
 ・被感染の場合 HSV-1:HSV-2=7:3
 ・女性は男性に比し重症化
 ・HSV-2の場合、年6回以上再発を繰り返すことが多い。

性器ヘルペスの症状(再発型)
 ・急性型に比し軽症
 ・皮疹出現の1日前から前期症状としてそう痒感、違和感を生じる
 ・皮疹は数個の小さい水疱ができる程度のことが多い
 ・7〜10日間程度で治癒
 ・繰り返し再発する
単純ヘルペスウイルス1型  歯肉口内炎、口唇ヘルペス、ヘルペス性角結膜炎など、眼、口、脳などの上半身に多いが、時には性器にも感染する。
単純ヘルペスウイルス2型  性器などの下半身にしか感染しないといわれている。

幼児の単発ヘルペス
 母親の口唇ヘルペスから間接感染と考えられるが、性的虐待(とくに欧米では)と考えられる場合もある。

尖圭コンジローマ
HPV-6,11などのウイルスが原因。
症  状 治  療
 肛門の周りや、膣口、小陰唇の内側などに生じる。小さな先のとがったいぼが集まって、ニワトリのとさかのような形状を呈し、腫瘤の数がふえてくるとカリフラワー状となる。  液体窒素による凍結療法や電灼術を行うことが多く、手術で切除することもある。
なお、少数であると簡単であるが、拡大したものの治療には苦労する。

ボーエン様丘疹症
HPV-16,また、HPV-33,34,39,55などのウィルスが原因。
 子宮頚癌がある人に多いといわれたこともあるが、合併したという報告はない。

高齢化社会
 ・真菌および細胞感染症
 ・おむつ皮膚炎
 ・肉芽腫性変化

外陰部の帯状疱疹:
 高齢者の場合は、膀胱直腸障害が生じることがある。

外陰部の痒疹結節:
 疥癬との鑑別を要する。

毛じらみ・頭じらみ・衣じらみ:
 根元に卵を生んで繁殖していく。毛じらみは頭じらみに移行する場合がある。

おむつ皮膚炎:
 乳幼児だけでなく、高齢者にも多く見られる。子供のものに比べ高齢者ではひどくなりやすいので、注意が必要。
人々はプライベートパーツで悩んでいる
「 ここでは、ありふれた皮膚疾患、すなわち湿疹や白癬などと、自分では異常ではないかと悩むような皮膚疾患を紹介し、最後に外陰部以外にも皮膚病を生じる皮膚疾患についてお話します。」

ありふれた皮膚疾患
 外陰部湿疹、外陰部白癬など

自分では異常ではないか?
 被角血管腫
 萎縮性硬化性苔癬など(陰門萎縮症)

外陰部以外にも病変を生じる皮膚疾患
 角層下膿疱症
 黒色表皮腫
 弾性線維性仮性黄色腫など

「外陰部の皮膚疾患ということで最後は外陰部だけではなく、全身にも見られる皮膚疾患をご紹介しました。以上です。」
質 疑 応 答
司会  ご質問はありませんか?
質問  癜風の質問なのですが・・・


 一般的には黒ナマズと言われ、胸とか背中とかにみられ、広がってくると首にもみられます。市販されているズーム液(20%水酸化カリウム)をつかって顕微鏡でみると、白癬菌ほどはっきりはしていませんが、菌糸がみつかります。
 また、指で患部をこすると粉を吹くのが特徴でもあります。
質問  京大皮膚科へ陰部に皮膚病をみる患者さんを紹介する場合は、どのように紹介したら良いのですか?


 基本的には何曜日でも差し支えありません。また、患者さんには初診で問診を取らせて頂いた後、専門外来をもう一度受診して頂くという形式をとっています。
京都大学医学部付属病院 皮膚科外来表
 しかし、先生方がみられて該当する皮膚疾患が疑われるような場合は、その専門外来の日に患者さんに受診して頂くようにすれば、その日の内に初診から専門外来へという形もとれます。
司会  まだ質問があるかと思いますが、時間となりました。


 今日は、どうもありがとうございました。