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| 「産婦人科領域の医療訴訟について」 佐賀千惠美法律事務所 弁護士 佐賀 千惠美 先生 ───────TOPへ |
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| こんにちは。弁護士の佐賀千恵美でございます。きょうはお招きいただきましてありがとうございます。こうしてドクターの皆様、それから医療関係の皆様とお話ができるのは本当に必要なことだし、ありがたいことだと思っております。 医療過誤訴訟は今までドクターの臨床からみてご不満もあり、今、大きく変わろうとしております。変わっていくためにはぜひとも当事者でいらっしゃるドクターの皆様のご協力が必要ですので、私法律家の世界の問題点をご理解いただきまして、共にあるべき紛争解決の方法をきちんとしていきたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。 私はご紹介いただきましたように最初1年間だけ東京地検で検事をしておりました。現在は京都で弁護士をしております。医療過誤は産婦人科のケースだけでも5〜6件関係させていただいたことがあります。医療過誤訴訟について私ども弁護士の実態から言いますと、一つ一つその都度勉強をしながらやっていくという状態でございます。それ以上に裁判官の場合は、弁護士のようにいろいろなお話を当事者から直に聞けません。裁判所に出た書類、それから証人尋問などで出た資料や、鑑定人が書いてこられた鑑定書でしか判断しませんので、ドクター側から見たて、実態を分かってもらっていないという、ご不満な判決もあるのではなかろうかと思う次第です。 |
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| <産婦人科領域の医療訴訟について> | ||||||||||||||
| 1.産婦人科の医療訴訟 (1)多い (2)長期化 他の科に比べても、産婦人科の医療過誤訴訟は多いです。医療過誤訴訟は、年によって違いますけれども、年間600件、700件などが提訴されております。そのうち産婦人科はやはり30%ぐらいあるというふうに統計上言われております。患者さんの数からいったら、内科のほうがずっと多いと思いますので、産婦人科での訴訟は非常に割合が高いと思います。その原因は、やはり内科の場合は、自分でかなり危ないかなと思って結果が悪くても仕方がないと思うのでしょうけれども、産婦人科の場合はおめでただということで行って、やはり思いがけない結果になったりしますと、ショックが大きいのだと推測をしております。 2.患者や家族の思い 医師の対応 「患者や家族の思い」についてですが、亡くなったり、重い後遺症が残っていることもあり、ご相談を受けるときは弁護士としても対応に神経を使うことが多いです。 名古屋で医療過誤を扱っておられる加藤弁護士の講演で話された「医療事故の被害者が持っている5つの願い」について紹介いたします。 1).現状回復。 子供を亡くしたような場合、その子供に帰ってきて欲しいと思いが強いわけです。これはもう帰ってきてもらうことはできないわけですけれども、そういう気持ちが非常に強い。 2).真相究明。 本当のところがどういうことなのかはっきりと知りたい、という願い。 3).反省謝罪。 すみませんと言って欲しい。医師が「ごめんなさい」とすぐ言うのが適当かどうかは別の問題ですけれども、被害者の側の気持ちとしては、謝罪の言葉を望む人が多い。 4).再発防止。 二度と同じような被害を繰り返して欲しくない、という願い。 5).損害賠償。 お金で、実損害や精神的ダメージを賠償してほしいという問題です。 以上のように、医療訴訟を考えて相談にこられる方は、いろいろな複雑な思いを持って弁護士の所に相談に来られます。 相談を受けるときの基本的な心構えを言いますと、やはりきちんと向かい合って時間をかけてお話を聞くことが大切で、せっかちにならないということです。相談者は本当にナイーブな気持ちで来られますので弁護士のほうでも対応は気を付けなくてはいけない。 これをクレームを受ける側のドクターで考えますと、とても大変なことです。 ですから、ドクターのほうが具体的な説明を早めに、また初期の対応については、誠実な対応をしていただくと、かなり後々の家族の気持ちというのは違うのではないかと。幾つかの相談を受けたときの印象です。やはりお互い人間ですので誠実な対応をしてくださっているというのは通じるものがあります。もちろん人によりますけれども、8割以上のケースは誠実な対応が通じるものだと考えております。 3.リスクマネージメントだけでなく、適切な解決のために、ドクターが積極的な関与を リスクマネージメントというのはこれは当然のことで、ミスを今後起こさない。それから、起こった場合の対応というのはきちんとしていただかなくてはいけないのですが、今まで医療訴訟に関わった医師の方々が、受け身になっていたと思うのです。それを改善するために積極的に各ドクター、医師会、研究会等の先生方が、積極的に関与していただきたいと切実に思っているわけです。
4.100年に1度の、司法改革の最中 (1)裁判の迅速化 日本の裁判は長すぎるというのが大方のご意見です。国際的な契約をするときは日本の裁判所で判決を受けなくてはいけないようなのを避けるということもあると聞いています。 アメリカは慰謝料が大きすぎる。日本は慰謝料が非常に低いので、負けても大したことはないが、期間が長すぎる、紛争解決手段として十分でないという事がいわれています。 (2)法曹人口を増やす───ロー・スクール 司法試験の毎年の合格者を3,000人まで増やす計画があります。そのためには今の司法研修所の体制では駄目なので、Low Schoolを設置する。法曹を作るための法科大学院を作っていこうということです。 (3)専門訴訟の充実 ───医療・特許・労働 医療過誤訴訟、特許や著作権の訴訟、労働関係等の専門的な訴訟について充実していこうという方向であり、裁判官も専門的な裁判官をそろえていこと取り組みがなされている。 (4)国民参加 裁判員 専門的な知識、ご経験が本当に再発を防止する方法もあり、被害者の救済という方法もあり、ドクターにとっても納得できる内容の判決・訴訟というのが用意してあります。 5.保険診療と検査 保険診療・検査の問題について、トラブルが起きてしまったとき、もう少し検査などを十分されていたら。。。と思うこともあります。ただ、現実問題として、必要と思われない検査には、保険診療が支払われないということもありますので、ジレンマがあると思います。 |
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| 1.妊婦・胎児の出産事故10件の概要 (1)出産前の適切な診断を怠ったため、胎児に胎児仮死・胎便吸引症候群を生じさせた上、 出産後の同症状に対する不適切な処置により、脳に重篤な障害を発生させたとされる事案 (2)陣痛促進剤の投与による子宮破裂が原因で母親が死亡したとされる事案 (3)子宮収縮剤の投与による子宮破裂が原因で、新生児が重症新生児仮死、低酸素性脳症となり、 脳が正常に発達しなかったことにより1歳5ヶ月で死亡させたとされる事案 (4)さい帯過捻帯叉は圧迫による血流障害により胎児を死亡させたとされる事案 (5)無呼吸状態で生まれた新生児に対する不適切な処置により脳に障害が発生したとされる事案 (6)不適切な分娩誘発剤の使用、吸引分娩、クリステレル圧出法により 母親・胎児とも死亡させたとされる事案 (7)不適切な新生児管理により、新生児に大動脈離断症等の後遺症が生じたとされる事案 (8)双胎間輸血症候群の適切な診断及び胎児の早期晩出を怠ったため、胎児の一方が死亡し、 他方の新生児については後遺障害が残ったとされる事案 (9)出産後、新生児と母親が数時間一緒に分娩台に寝るという方針の産科病院において、 新生児が母親と分娩台にいる間に死亡したとされる事案 (10)出産に際して、不適切なメトロの使用により、胎児が仮死状態で生まれ、その後、 脳性麻痺の後遺障害が生じさせたとされる事案 |
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2.施術・術後管理の適否事件12件の概要 (1)総胆管嚢腫の手術中、術後の不適切な処置(膵管を傷つけ、漏出した膵液の適切なドレナージを 行った、同手術後に起きた大出血時に出血点を同定しなかったなど)により、患者を死亡させたと される事案 (2)胆石摘出手術を受けて死亡したとされる事案 (3)直腸癌の摘出手術を受けた後、緊急手術を受けたが、レイウスに羅患し、術後感染症、 肺水腫により死亡させたとされる事案 (4)骨折後の術後経過が悪く、傷口が化膿して治療を長期化させたとされる事案 (5)大腸ポリープの切除に際して、腸膜炎を併発させたとされる事案 (6)不適切な気管内挿管により酸素欠乏脳症になり、多臓器不全で死亡させたとされる事案 (7)卵巣摘出手術後の不適切な術後治療により肺水腫により死亡させたとされる事案 (8)手術時のガーゼを体内に取り残したため、消化器不全、腸運動不全となったとされる事案 (9)脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血に対する頭蓋形成手術の失敗により硬膜下血腫が 生じさせたとされる事案 (11)胆管癌の診断及びこれに対する適切な治療が行われなかったため、延命利益及び期待権が 侵害されたとされる事案 (12)食道癌の手術の際、誤って肺動脈を損傷したとされる事案 3.診断・治療・投薬の適否事件12件の概要 (1)健康診断の際の胸部エックス線検査において、異常陰影が撮影されていたのに「異常なし」と 診断したことにより。肺癌の早期治療を受ける機会を失し、健康回復が困難になったとされる事案 (2)急性心筋梗塞の適切な診断、治療を怠ったため、身体に障害が残ったとされる事案 (3)抗精神病薬の継続投与により、悪性症候群による多臓器不全を発症させ、死亡させたとされる 事案 (4)右足踵骨骨折に対する適切な診断、処置を怠ったために、反射性交感神経性ジストロフィーに なり、右足に関節機能障害等の後遺症を生じさせたとされる事案 (5)抗癌剤の投与量を誤ったために重症感染症、肺血症に羅患させ、多臓器不全で死亡させたと される事案 (6)ジソピラミドを静脈注射するに際し、心電図モニターを監視していなかったため、中枢神経障害を 起こしたとされす事案 (7)不適切な硬膜外ブロック注射により右下肢機能障害を負ったとされる事案 (8)抗癌剤による不適切な化学療法により腎不全となったとされる事案 (9)心筋炎の確定診断及びこれに対する適切な治療を怠ったため、患者を死亡させたとされる事案 (10)TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)との確定診断及び血漿交換を怠ったため、 妊婦を死亡させたとされる事案 (11)交通事故により負傷した原告が、被告病院に搬送されたが、医師の肺血栓塞栓症の診断・治療 のないまま死亡させたとされる事案 (12)慢性十二指腸潰瘍により通院治療を受けていた患者が、精神科の病院に転送され、 十二指腸潰瘍の適切な治療を受けないまま死亡させたとされる事案 4.その他の事件3件の概要 (1)点滴の接続部分がはずれ、血液が逆流して大量の出血を生じ、死亡させたとされる事案 (2)交通事故後、応急措置そして転院させたが、その結果、転院先で死亡させたとされる事案 (3)脳内出血と診断され入院していた患者が留置針によってMRSAに感染させたとされる事案 |
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| 質疑応答 | |
| 司 会 | 非常にいいお話をお聞かせていただきました。質問があると思いますので…… |
| 質 問 | 時々、鑑定人を受けることがあります。私的な鑑定人の場合もあれば公的な場合もある。私的な場合は弁護士さんに結果を聞けばいいですけれども、公的な場合に結果を知ることができません。鑑定の結果を知りたい場合は、どこに聞いたら良いのでしょうか? |
| 佐 賀 | 裁判所に法的鑑定人になっていただいた場合は、裁判所に聞いていただければ、教てもらえると思います。鑑定人の先生ですので、書記官と裁判官両方に結果を知りたい旨を伝えておいたらよろしいかと。大概は大丈夫ではないかなと思います。その場合は部係の事件番号(部係と事件番号、例えば民事何部、平成12年ワ第何号など)を控えておいていただきましたら、大丈夫だと思います。鑑定をされた結果が判決にどう反映しているのかというご研究は大事なことと思います。 |
| 質 問 | 一つお伺いしたいのですが、先生のレジュメにもございましたのですが、胎児仮死という言葉がありましたけれども、どの段階であります? 最近この胎児仮死という言葉をよく使われるのですけれども、どのようなことを指して使っておられるのか。なぜそこでが胎児仮死という言葉は出ていないかという理由が分からないです。 大学ではfetal distressという言葉が、それを日本語に直訳したのが胎児仮死という言葉なんです。アメリカでもこの言葉はdistress findというふうなベーシック用語です。 それから、最後のところの保険の話に移りますけれども、保険の成立要因です。胎児仮死という病名を付けないと、例えば急速分娩に胎児仮死は付けないと保険が通らないというのがあるのです。ですから、我々は保険の病名として重宝して使って、そのフラットモデルで法曹界によくある場面で出てくるのではないでしょうか。 |
| 佐 賀 | 私は全然それを存じ上げませんでした。ほかの先生で何かご存じのことはありますか? もし何か私のほうで調べられましたら追加で申し上げますが、ちょっと分からないです。確かに病名は難しいです。たまにあるのです。その病名を書いておかないと保険が通らないので書いてある。ただ私どもはカルテの証拠保全をしましたときはそれを書いてしまいます。何かドクターに不利になることがあるわけです。だから、本当に何かその保険との関係というのは先生方にとっては難しいというか頭の痛い問題でいらっしゃるかなというのは思います。 |
| 意 見 | 保険はますます難しくなりまして、いろいろなビースコープでも妊婦さんのビースコープを介して一回か二回は保険で出すが、後は見ませんと。いわゆる少子化時代ですので、できるだけ妊婦さんとか胎児を大事にするように国のほうは考えてくれているのだと思ったら全然違って、どんどん削っていくとになって。だからそういう場合にそれでは保険がどうなるかを見ておこうということになると医療事故につながってきて、なぜそのときに見ておかなかった、なぜそのときに帝王切開をしなかったのかと。必ず何か問題が起きたら、後から「なぜそれをしなかったか」ということを言われると、だれでも言うわけです。皆、後から見れば分かることで、それなら帝王切開しておいたら、片っ端から帝王切開をしていたら問題がないかとかになる。片っ端からビースコープを取られるごとに見ておけばその赤ちゃんの胎児の様子もよく分かったかもしれない。一回では分からなくても何回も見れば分かることである。そういう問題が婦人科の不思議な関係です。それから、もし一時事故が起きましたら、ベビーがそういう脳障害を起こしましたら、そのお父さんやお母さんだけではなしに一家全部が相当な費用の負担と精神的な負担が掛かるということは私たちは全然分かっていないというのではなくて、よそのほかの婦人科以外の方たちよりも婦人科の先生のほうがよほどその事についての重大さはよく知っているはずです。だから謝らないとか何か言いますけれども、それはひしひしとその事は「何であのときにこうしておいたら良かった」「ここはこうしなければならなかったのだろうか」とか責められなくてもおそらく皆、考えて生活をしておられると思うのです。ですけれども、今の言うように保険が通らない問題とか、非常に妊婦さんに関するそういう国からの思いやりというのですか、それが全く欠けた状態ですので、見ていただいたらそれはよく分かると思います。なぜそんなことになったのかは知りませんけれども、厳しいなと婦人科の先生連中は日夜生活をしているというふうには思いますので、少しまた理解していただくように弁護士さんとか、裁判官の方たちとか、婦人科の先生や看護婦さんなんかともまた交流もこれから大きく考えていただきたいと思います。私の意見です。 |
| 佐 賀 | 貴重なご意見、ありがとうございます。ほとんどの裁判官はその辺りは分かってないと思います。 |
| 意 見 | 今、先生がおっしゃったように、どうも医療保険と検査ということ、検査にしろ何にしろあまりにも萎縮診療といってあまり保険を使うと駄目だからということで、どんどん萎縮した状況で診療が進んできているということが結果的に自分の首を絞めてしまってそういうことにつながっていくような感じは少ししていますので。だけど、我々としてはそういうことをエクスキューズに、言い訳にすぎないですから、保険が通らなくてもやはりたくさん検査はしないといけないというふうに思います。特に質問というわけではございませんです。 |
| 司 会 | まだ、お話はあると思いますが、時間がまいりましたので、このへんで・・・ 佐賀先生、ありがとうございました。 |