「HCG分泌の形態学」
「子宮頚癌細胞診の若年要精検者の推定病変
(中小医療機関のDATA)」

株式会社メディック 病理細胞診センター              
滋賀医科大学名誉教授   吉田 吉信 先生


HCG分泌の形態学 (第10回 日本胎盤学会:福岡市で発表)
【目的】著者は1964年Exp.Cell Res.誌上に電子顕微鏡上syncytial trophoblast(S細胞)のGolgi体で多数の小顆粒が形成され、移動・融合して多数の大型顆粒となり、大型細胞質突起に集合し、逐次exocytosis で絨毛間腔に内容の糖蛋白質を放出することを報じ、hCGの分泌像であろうと推論した。以後長期に亘る観察により同様な像を6例捕促し得た。その細胞化学・免疫組織化学的検討を加え、これらの顆粒はhCG であることを同定しhCG 分泌の形態学的特徴を明らかにする。
【成績】電顕的に分泌小顆粒(直径100nm)は高密度蛋白であり被膜との間に多少の空隙を有し、S細胞の基底側半分の領域に多数存在する。大顆粒は直径1μ程度であり、S細胞の繊毛間腔に突出する桿状・舌状・橋状の大型細胞質突起内に多数ある。突起には他の細胞質小器官を欠く。exocytosisにより液化した内容が逐次絨毛間腔に放出される。組織化学的には基底側半分のPAS陽性帯と、突起の強いPAS陽性を認めうる。顆粒のPAS陽性のためである。Azan 染色ではbasophilic でblue を呈する。この細胞質突起は免疫染色ではhCG-β(十),SPI(一),hPL(一)であり、三者一様に陽性となるS細胞質とは異なった反応を呈することから、この顆粒はhCGそのものであると断定出来る。hCG濃度の高い妊娠初期でも、この様な分泌像を見出せる頻度が極めて低いこと、分泌像の見つかる材料では常に多数の絨毛に見られること、およびhCGの体内半減期の長いことから考へ、この分泌顆粒の形成・放出は、多くの絨毛で同期し、かなりの time Interval をおいて起こっているものと推論される。
【結論】妊娠初期絨毛S細胞のhCG分泌顆粒の同定・形成・放出を形態学的に明らかにした。

                       

子宮頚癌細胞診の若年要精検者の推定病変 (中小医療機関のDATA)
 滋賀県における老健法に基づく30才以上の婦人の子宮頚癌集団検診成績では、要精検率は年度により多少の変動はあるものの、0.77%(0.55〜1.18%)であり、精検による組織確認を経た癌(上皮内がんと浸潤癌)発見率は、1.47‰(0.90〜2.22‰、但し近年は0.90〜1.01‰)であったと報じられている。
 一方、医療機関での検診は大病院を除けばその実体は不明であった。有症状者が受診する割合が多いので、その要精検率、癌発見率は当然高いと想像されていた。
 そこで今回、中小医療機関からの委託を受けて細胞診業務を行う(株)メディックにおける細胞診の成績を公表して、最近の検査実体を明らかにする。特に10台後半から20才台の若年婦人についての成績発表は、少なくて、近年の若年者性感染症、特に子宮頚癌発生の因子となるHPV感染の実態と合わせて、対癌活動の一つの指針となると考える。
第1表 医療施設における子宮頚癌細胞診成績            期間:平成14年1月4日〜12月25日


 平成14年(2002年)中にメディックの子宮頚癌細胞診受託件数は83003件であり、その受信者年令分布は15〜19才 1.90%,20才台 24.03%,30才以上 69.07%,年令不詳 4.17%であり、細胞診でクラスVa以上の要精検率は、それぞれの年代区分の受診者の4.17%,2.57%,1.53%及び1.96%であり、総数では2.23%であった。特に20才台後半では2.93%,30才台2.61%であり、若年者間の要精検率は高値を示す。
 また、全体でみても滋賀県の集検のそれに比しかなり高く、30才以上の受診者のみで比較すると集検のそれの2倍になる。クラスVbは総数の1.1%,WとX合わせて、0.9‰(但し30才以上では1.23‰)であり、このW+Xを細胞診上の癌発見率とすると、近年の集検の癌発見率を超える。

(参考) 滋賀県の集団検診                                                        
 昭和63年〜平成10年度の11年間の要精検率 0.77%(0.55〜1.18%、平成10年度は0.95%)。
 昭和44年〜平成 7年度の26年間の癌発見率 1.47‰(0.90〜2.22‰、近年は0.90〜1.01‰)
(上皮内癌を含む)。
第2表 若年者子宮頚癌細胞診推定病変要精検例について
(15〜29才の確定診85.14%を吉田が担当した)

 15才以上29才迄の若年者要精検例について細胞診上の推定病変を加味して表示すると、上表の如くである。(実数で示す)これらは妊娠を契期に細胞診を受けた者が多い。
 要精検例の内、HPV感染の形態指標となるkoilocytotic atypiaは、推定病変mild dysplasia の17%になっている。若年者ではクラスVb以上は少ないが20才台後半にはかなり増加してくる。その他若年者のトリコモナス、ヘルペス感染も少数みられ、別に行った病理組織診で外陰尖形コンヂローマも少数ある。
19才でCondylomatous carcinoma 1例もある。

 以上の如く若年者に子宮頚癌関連病変を有する者やHPV感染者の多い実態が判明したので、その性感染症や癌関連病変の検診・予防・治療に今後の強力な対策が望まれる。