| 「腰痛の診断と治療」 関西医科大学 整形外科学 助教授 赤木 繁夫 先生 |
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| “腰痛”は、日本人の持つ主訴の中で、肩こりと並んで最も頻度の高いものである。国民衛生の動向(1999年)によれば、腰痛の有訴者は1000人中、92.5人であり、我々二足動物にとって、極めて普遍的な訴えのひとつであるといえる。ただ、“腰痛”は、症状に過ぎず、その中には多彩な疾患が含まれていることはいうまでもない。腰椎病変だけではなく、内科、泌尿器科、婦人科に関わる種々の内臓疾患も腰痛の原因となるし、心因的な影響も少なくない。また、下肢症状を伴う例ではASO等の血管病変や糖尿病との鑑別も問題となる。 整形外科疾患のなかでも、末梢神経の絞扼性障害、骨盤や仙骨の病変、胸腰椎以降部の病変、股関節・膝関節の病変等々鑑別を要する病態が多く含まれている。 腰痛と産婦人科とのかかわりを考えてみると、@産婦人科疾患が腰痛の原因となるもの、A整形外科疾患が合併しているもの、B産婦人科疾患に関連して発生したと考えられる脊柱・骨盤の異常に大きく分けられる。 @に含まれる病態としては、筋腫や腫瘍、子宮位置異常、月経異常等が挙げられる。 Aに含まれるものは、大きく分けて変性疾患(椎間板ヘルニアや変形性脊椎症等)、脊椎・脊髄腫瘍、炎症性疾患(可能性脊椎炎やカリエス)、外傷(特に、骨粗鬆症に伴う脊椎骨折)が代表的なものであるが、特に婦人科領域としては、閉経期や退行期骨粗鬆症が問題となる。 Bに含まれるものとしては、妊娠に伴う腰椎アラインメントの変化に起因する腰痛や分娩による骨盤外傷(恥骨結合離開)等が挙げられる。本講演では、腰痛のメカニズムや婦人科領域との関わりを概説するとともに、腰椎外科の基本的コンセプトについて述べた。 |
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| <整形外科から見た腰痛のメカニズムについて> | ||
| 脊柱は、一種の積み木である。骨性要素としては前方では椎体、中央には椎弓、上関節突起、下関節突起が存在し、後方には棘突起がある。これらの骨性要素をつなぎとめる構造として、前方では椎体間をつなぐ椎間板や前後方縦靭帯、後方では上関節突起と下関節突起により形成される椎間関節や棘突起間をつなぐ棘間靭帯や棘上靭帯が挙げられる。また脊柱管内後方には黄色靭帯が上下の椎弓をつなぎとめている。すなわち脊柱はその支持性を担う骨性部分(bone
segment)と可動性を担う椎間板や椎間関節(motion segment)に分けられ、頚椎から腰椎まで基本的に同様な構造の繰り返しといえる。この機能単位のどこかに障害が生じれば、頚部痛や腰痛をきたすこととなる。 bone segmentの病態としては腫瘍、炎症(感染)、外傷(骨粗鬆症性脊椎骨折を含む)等が挙げられる一方、motion segmentの病態としては、可動に伴う変性に起因する病態、すなわち、変形性脊椎症、変性すべり症、椎間板ヘルニア等が挙げられる。 臨床症状あるいは画像診断を駆使して、上述の機能単位のいずれの部位にいかなる病態が存在するのかを探ることが、我々整形外科医が日常診療上、腰痛の診断に用いるアプローチであるといえる。もうひとつ、腰痛を考える上で重要なことは、脊柱全体の配列の問題である。我々の腰椎は二足歩行を獲得することの代価として、腰椎の前彎を余儀なくされている。すなわち、我々の腰椎には常に前方方向への応力がかかっていることとなる。そのため、積み木をつなぎとめる椎間板は徐々に変性していく宿命にあるし、腰背筋には過大なストレスにさらされていることとなる。日常生活の中で腰椎にかかる不可を軽減し、過度の前彎を防ぎ、腰椎を支持している腹筋や背筋の筋力を維持し、柔軟性を持たせることが腰痛治療の第一歩といえる。 |
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| <整形外科から見た腰椎外科の基本的考え方> | ||
| 腰痛の保存的治療としては、腰椎の前彎を考慮した日常生活動作の注意や腰背筋や腹筋の筋力強化や柔軟性の獲得・維持が基本である。その他、NSAIDの投与、腰椎の安定性を意図した装具療法、温熱等の理学療法、あるいはブロック療法を組み合わせて保存的治療が行なわれている。病態によっては、外科的治療が選択される。 我々が様々な腰椎疾患の外科的治療に用いることのできるコンセプトは限られている。すなわち、除圧、固定、整復・矯正の3つであり、これらを組み合わせることにより、すべての病態に対応している。 この中で、ほとんどすべての病態に対して適応される概念が除圧である。 椎間板ヘルニアでヘルニアをとることにより、変形性脊椎症(腰部脊柱管狭窄症)で椎弓切除することにより、あるいは腫瘍を切除することにより神経組織への圧迫を解除し、臨床症状を軽減させるというように、すべての病態に対する外科的治療の基本コンセプトである。 更に病態によっては除圧の後に固定術を加えることとなる。例えば変性すべり症で腰椎の不安定性がみられる、あるいは転移性脊椎腫瘍で脊柱の構築が破壊されているといった症例では、その原因となっているsegmentを、骨移植や内固定材料を併用し不動化するということが可能である。 更には、脊柱の変形が症状発現の要因となっている病態では、様々な手術道具を用いてその変形を矯正するということが可能となっている。 人口構成の高齢化や高齢者の求めるQOLの高度化に伴ない、さまざまな病態に対する腰痛外科の頻度は今後も増加していくものと考えている。 |