| 「産科に役立つ新生児診療のポイントー蘇生と皮膚ー」 三菱京都病院 小児科部長 天満 信二 先生 |
| 今回は蘇生と皮膚についてと題しましたが、主に蘇生についてお話をしていきたいと思います。蘇生というものは難しいもので、毎日同じような蘇生をおこなっていると、それが正しいかのような錯覚になりがちです。先生方が常識として行っていることもあるかと思いますが、その重要性を再認識していただくためにも、お話をさせていただきたいと思います。 新生児の吸引は、出産後すぐされますか?吸引を行う時の状況は、病院によって違います。京都大学では、病的新生児を前提に考えているので、健常新生児については何もうたっていない。吸引についてはマニュアルのなかで、特にかかれていません。その他の病院では、神奈川県立こども医療センターのマニュアルに、吸引についての項目があります。 今日は「AHA 心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガイドライン 2000」を参考に、皆様の間でディスカッションしていただきたいと考えています。 |
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| <胎児の肺発育> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 1、胎盤でのガス交換 胎盤 : 血管抵抗小→血液が流れやすい 胎児肺: 血管抵抗大→血液が流れにくい(約10%) 母体の動脈血PaO2は85-100mmHg 胎児の動脈血(臍静脈)PaO2は32-43mmHg PaO2の差が大→胎盤での酸素の受け渡しが容易 胎児血が低いPaO2で酸素が運べる理由 Hb値が大(多血傾向) HbFの酸素親和性>HbAの酸素親和性
SPB、SPC :サーファクタントの肺胞内での適正な配置に関与 サーファクタントは肺から能動的に分泌されて、 肺水を形成 肺胞→気管支→気管→羊水 と流れる 肺水の量は、機能的残気量に等しい 肺の気道形成に重要、第一呼吸が容易
『Laplaceの公式』は、P(肺胞内圧)が2T(表面張力の二倍)をR(半径)で割ったものになるという公式(P=2T/R)です。左の小さい方の肺胞内圧は、右の大きい方の肺胞内圧の倍になるわけです。表面張力が同じとすると、半径が半分の肺胞の内圧は倍になる。そうすると小さい方の肺胞から大きい方に空気が流れてしまう。つまり、大きくてもともと膨らんでいる肺胞の方に空気が入って小さい方は萎んでしまう。肺胞の大きさに不均衡があると、呼吸をした際に吸った空気がきれいに外へ行かずに隣の肺胞に入ってしまうわけです。 吸気を起こそうとするときには、萎んだ風船を膨らます時に最初すごく力が要りますけれども、あれと同じことで、萎んだ肺胞に空気を流入させるのに非常に大きな仕事量が要求される。肺胞の大きさにばらつきがあった場合、このことが大事なポイントになります。これは蘇生とは直接関係ないのですが、なぜ呼吸窮迫症候群で呼吸に非常に多くのエネルギーを要するかという原因の一つになっています。 資料:6
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| <胎児の肺生理> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1、移行期 胎盤(酸素化)→臍静脈→静脈管→右心房→卵円孔→左心房→左心室→上行大動脈 体静脈血→右心房→右心室→動脈管→下行大動脈
二つやり方があって、一つはTidal Liquid Ventilationといって、肺全体にPerfluorochemicalsを入れて、Tidal Volumeに相当するPerfluorochemicalsを追加して換気を行います。専用の人工呼吸器で、1分間に4回ぐらいの換気でよいそうです。 それから、もう一つがPartial Liquid Ventilationといいまして、機能的残気量に相当するPerfluorochemicalsを肺に入れて、あとは人工呼吸器をそのまま使用するというやり方で、ちょうど通常の人工呼吸器とLiquid Ventilationの中間的なものだそうです。メリットはTidal Liquid Ventilationに比べて落ちるけれども、通常の人工換気と比べるとかなり肺胞のバランスの悪化なんかは防げるということで、今後はこういうようなものがどんどん使われるようになってくるのではないかと思います。 サーファクタントの産生を詳しく言いますと、資料:9です。20週ではまだあまりサーファクタントは産生されていません。生存限界が23週ぐらいになってきていますが、その頃にサーファクタントは産生が始まります。34から35週で急激に増加し、早産傾向なんかがあります産生が早まる事は、ご存じだと思います。 換気のメカニズムですけれども、成人は胸郭の呼吸筋を使い胸郭を引っ張って肺を膨らますということが可能ですけれども、赤ちゃんの場合は胸郭のコンプライアンスが悪くて肺が膨らみにくいので、そういった形で呼吸するのは難しい。では新生児ではどのようにして呼吸するかというと、そこに書いてあるように横隔膜が縮むのです。横隔膜が縮むというのは、横隔膜はこういう格好ですね。こういう横隔膜が縮むと当然距離が短くなりますから真っ直ぐに下がって、その時に腹部臓器が下に押しやられるので、胸腔の容量が増加し肺が膨らみます。呼気はそれに対して縮んでいた横隔膜が緩むだけです。このように赤ちゃんの呼吸は横隔膜を使っています。それが赤ちゃんにシャックリが多い原因なんかにもなっているわけです。肺のコンブライアンス、胸郭だけでなく肺のコンブライアンス自体、肺の膨らみやすさ自体も成人より小児の方が小さくなります。大体、気道抵抗でいいますと、鼻の所で約1/4ぐらいの気道抵抗があると言われている。これも赤ちゃんにとって呼吸する上で意外と抵抗になっている場所なわけです。そうやってガスを出し入れして炭酸ガスや酸素は、肺胞の所で濃度勾配の拡散でやりとりしています。従って、これは表面積と隔膜の厚さに関係します。表面積が大きければ大きくなるほど有利になりますし、隔膜の厚さが分厚くなれば分厚くなるほど不利になるということで、未熟な肺だと当然ガス交換にとっても不利であるということです。 |
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| <新生児の評価と蘇生> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 子宮内生活から子宮外生活へ(一生で最も重要な瞬間) 全出産の6から10%で出生時に蘇生が必要 陽圧呼吸で酸素の供給と二酸化炭素の除去 心マッサージで循環の維持 ショックに対して輸液(虚脱を防ぐ=容量の確保) 強心剤の使用 1、準備 1)体温の維持(部屋の温度、ウオーマーの準備) 2)気道の確保の準備 3)血管確保の準備 4)蘇生に必要な薬品(メイロン、エピネフリン、カルシウム製剤など) 事前のプログラム作成 最低限の情報(早産?胎児数?羊混?) 2、新生児の安定化 乾燥と加温(暖めたバスタオルを使う、高体温もよくないことに注意!) 気道 正しい姿勢(あごを少し引く姿勢、小さな肩まくら) 呼吸がうまく始まらない時には 刺激(足底をはじく、背中をこする、タオルで拭く) 吸引(口唇から5cmまで、3-5秒、90-100mmhg以下) 「ガイドラインでは、肩まで娩出され胸が出ていない段階で、鼻と口の吸引を行う」 健康で元気な出生直後の児は、出生後の吸引は必要としない 羊混あれば、児の頭が出た段階で、口、咽頭、鼻の吸引 胃内吸引は、全身状態が安定するまでは行わない 児の刺激 足底をはじく、背中をこする、乾いたタオルで拭く 自発呼吸が始まらなければ、陽圧呼吸が必要 「小児循環器分野では蘇生はルームエアーがよいとあるが、小児循環器医を除く小児科医と産科医は100%酸素を使う方がよいと思います。ガイドラインには100%酸素が悪いという記載がないので、出来る限り使うほうがよいと思います。あと、麻酔のできるバックを使っておられる方がいるかもしれません。圧の調節が難しいので、バロトラウマで気胸などにならないよう気を付けてやってください。圧がかかりすぎないように。そういうバックを使う場合は必ず圧ゲージがあって、圧力を確認しながら使ってほしいということも書いてあります。」 3、新生児の評価 呼吸 刺激に対する呼吸の評価(呼吸数、深さ) 不完全な呼吸に対しては、陽圧呼吸 心拍数 臍帯の根元の触診、聴診、頚部又はソケイ部の触診 心拍数が100未満→陽圧呼吸 心拍数が60未満→陽圧呼吸+心マッサージ 皮膚色 自発呼吸があり心拍数が100以上で全身チアノーゼ→酸素投与 アプガースコア 1分、5分は必ず(以後7点以上になるまで5分ごとに採点) 1分の採点までに必要があれば蘇生を始める 早産児では、心拍数以外あまり意味がない(蘇生の必要性の判定には最も有用) 4、新生児の蘇生 酸素投与 呼吸が適切で心拍数が100以上で中心チアノーゼあり→100%酸素投与 皮膚色が良くなれば徐々に中止 分娩室でCPAP開始すると人工換気の適応が減る 換気 無呼吸(喘ぎ)あるいは心拍数100未満の徐脈で補助換気の適応(30-60/分) マスクは鼻と口をカバーし、目や顎にかからないこと 胸壁の動きや聴診で、両側の肺への空気の入りを確認 心拍数が100以上になれば、徐々に回数や圧を下げる 気管内挿管の適応 ・マスクでの加圧が有効でない ・気管内吸引が必要 ・補助換気が長く必要 ・横隔膜ヘルニアの場合、マスクの換気せずに気管内挿管 心臓マッサージ 30秒のマスク加圧で心拍数60未満の場合 必ず100%酸素を投与とともに行う 2種類の方法 胸骨を両方の親指で圧迫 胸骨を第2、第3指で圧迫 胸骨下1/3、胸郭前後径の1/3の深さまで 心マッサージ3:人口換気1 「具体的に言うと、1分間に90回の心マッサージと人工換気30回。そうすると、60秒間で120回の操作ですから1秒に2回心マッサージ、次の1秒は心マッサージと換気ということでかなり大変です。60秒ごとに心拍数を確認して60以上に上がったら心マッサージはやめていいということです。」 薬物 エピネフリン αアドレナジック+ベー夕アドレナジック作用 心停止時にはα作用が重要(血管収縮→血圧上昇、心マッサージが効果的になる) 心収縮力増大、心拍数上昇 心停止または100%酸素で30秒人工換気と心マッサージして心拍数60以下なら、適応あり 0.1-0.3mg/kg、3-5分毎に繰り返す(頭蓋内出血のリスク高まるので、これ以上の投与量は使用 しない、脈拍を触れるまで) 静脈内投与または気管内投与(気管内投与の方が血中濃度は低く、静脈内投与の10%くらいと 考えられるが、投与量は増やさない、静脈確保優先) Volume Expanders 出血が疑われる、または蘇生に反応しない場合に適応 生食水または乳酸リンゲル(10ml/kg) O型Rh(−)血(母体血とクロスマッチしてから)ナロキソン 分娩4時間以内に母体に投与された麻薬による呼吸抑制の治療 まず適切な人工換気を開始してから使用 母が麻薬常用患者の場合は使用しない 0.1mg/kg,2-3分毎、静脈内投与または気管内投与 メイロン 酸血症の補正→心筋の収縮力回復 効果を上げるには、適切な人工換気と循環が前提 1-2mEq/kg(濃度0.5mEq/mlにして)ゆっくりと静脈内投与 高ナトリウム血症と頭蓋内出血に注意 「実は一番効くのはやはりメイロンです。呼吸の開発さえうまくいけば、それで9割以上は蘇生が要らない状態になるのですけれども、残り10%ぐらいの人はそれだけではよくならないので、自発呼吸がしっかりある状態にならなければ、例えば心拍数が上がってこないし状態が良くないという場合には迷わずメイロンを使ってください。 具体的に言いますと、量が8.4%、1ccが1Meqのメイロンを2倍に蒸留水で薄めまして、体重3kgの子供ですと大体10cc。体重の1.5から3倍のmlのハーフメイロン、2倍に薄めたメイロンを使っています。 ルートですが、末梢で取れたらそれでいいですけれども、末梢のルートを慌てて確保にいってもなかなかうまくいかないので、栄養カテーテルで結構ですから、適当なサイズの清潔な栄養カテーテルを迷わず臍帯の静脈に突っ込んでいただく。ただし、あまり深く突っ込みますと肝臓に直接薬品が入りますので、皮膚を越えた段階ですぐ止める。フラッシュバックで血液が返ってくるのを確認すればもうそこで止めてしまい、ハーフメイロンを投与してください。 他の薬に関して量とか使える種類について話しますと、例えばエビネフリンなどを気管内に投与することもあるのですけれども、気管内に投与しても結局吸収されるのは静脈内投与のおそらく10%ぐらいというデータがあります。ただそれでは10倍入れたらいいかというと、10倍入れていいというエビデンスがないので、今のところ静脈内投与と同じ量にしますということが書いてあります。やはりできたら静脈剤投与をおすすめするわけです。」 蘇生後 1)血圧の維持(Volume Expander、昇圧剤) 2)適切な輸液 3)けいれんの治療 低血糖症、低カルシウム血症に注意 <心パックの説明> 「CPAPについて説明します。三菱京都病院の患者が使っている画像です。最近これが出たおかげで呼吸器が非常に早く外れるようになりました。前は人工呼吸器の回数を5回/分とかに減らしてから抜管していたのですけれども、今は20回ぐらいに減ってきたらこういうネーザルCPAPの機械を装着し抜管できます。 鼻に付ける専用のチップは大きさが3種類ありまして、鼻の大きさ等に合わせて着け、マジックテープで頭の後の方へ引っ張っています。これには専用の帽子があり、上からチューブが来てこの帽子の方へ引っ張り、通すわけです。帽子のある部分に穴があいており、ここを通して、それから頭を使って固定するような格好です。新生児はよく動くので外れやすいのですが、はずれても簡単にはめられます。看護士だけで医者がいなくても十分管理できる状態です。 次の画像が本体で、加温加湿器があって、ここに本体までのチューブがあって、こちらが患者側へのチューブです。頭の上からチューブが来て圧がかかる。非常に簡単な構造で、酸素濃度を調節するつまみや流量を調節するつまみがあり、使い方は鼻に突っ込んでいただいて流量ゼロの段階からつまみを上げて段々流量を上げていきますと、圧のインジケータがあり圧が上がってきます。圧が4から6の所は色が変わっています。そこへこのインジケータの針が来るように設定するだけです。非常に簡単です。 もし早産で呼吸・心拍に注意が必要な時、もしこの機械があれば素早くこれを使っていただき、人工呼吸器も要らないし、場合によったら小児科医が来る必要もないというような結果になることが結構あると思います。」 |
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| <新生児の皮膚> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 1.乾燥肌 保湿成分の不足 Emolient Lotionの使用 「出産後からエモリエントローションなどで、肌の保湿を整える。」 2.感染対策 MRSA 母子伝達(院内感染と考えられていたが、母親からの感染がほとんど) 手のアルコール消毒(部屋の外でなく、新生児に触る直前に行うほうが有効) よく触る部分の清拭(部屋のノブ、スイッチなど、床でなく・・・日常触る部分に注意を払う) |
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| <質疑応答> | |
| 司会 | 何かご質問はありませんか? |
| 質問 | 出産直後の赤ちゃんに全員吸引することについて、吸引して弊害がでるということですか? 例えば予想外のこと羊水混濁や粘稠の要素があると、吸引をやっていますので・・・ |
| 天満 | 先ほど言った口唇からの距離と圧、吸引する量、この3点に注意して行ってもよいと思います。私の経験で最近はできるだけ吸引しないようにしているのです。産まれてきてポジショニングをし、刺激をして激しく泣き出し、色も良くなっている状態であれば、基本的に吸引をしないようにしています。ただ羊水混濁の場合は、本編でも言いましたけれども、一応吸引はした方がいいと思います。今日は健康な赤ちゃんを大前提でということです。ケースバイケースで、実は吸引をしたらいいと考えています。したら駄目とかではなくて、吸引をしなくてもいい赤ちゃんにしているケースが結構あるのではないかという提案です。というのは、感染対策でも何でもそうですけれども、今はEBM、EBMと何がEBMかというと、要するに要らないことはできるだけ削って合理化し、その分を他のことにまわしましょうという発想が僕は大事と思っているわけです。 |
| 質問 | サーファクタントとは、どうように理解したらよろしいのでしょか? |
| 天満 | 必要であると判断したら、迷わず気管内挿管しています。体重1kg当たり1バイアル入れます。1バイアルは4ccで溶解するようになっていまして、それを標準的なやり方は5回に分けています。仰向けのままでまず1回入れておいて、次、側臥位にして右肩を上にする、右の臀部を上にする。反対にして、左の肩を上にする、左臀部を上にする。要するに体位を利用して満遍に行き渡らせようというのがもともとの理由ですけれども、ただ1回投与でポンと入れるという話もずいぶん出てきます。 |
| 質問 | マスクはいつつかうのですか?もちろん吸引をして、そして投与を2回にして、それであと交換して、そのあと気管内の洗浄をやる場合も、その洗浄行為は液と量はどれぐらいで組み合わせをしたらいいのでしょうか? |
| 天満 | 成熟児で体重3kgある子であれば1ccぐらい使われればいいでしょう。1ccといっても2〜3回に分けて、1回0.2ccから0.3ccぐらいでいいと思います。一番効果があるのはサーファクタントを使って洗うのが一番効果あります。でも、そういう使い方がいいのかどうか、はっきりいえませんが、非常に効果があるのは事実です。 |
| 質問 | 母親からの感染で、手洗いよりも、アルコールで拭くことが有効とありましたが、積極的に行った方がよいのですか? |
| 天満 | アメリカのCDC(Center for Disease Control)では、感染のガイドラインがありまして、アルコールが一番いいといっています。というのは、イソジンとかでもいいですけれども、イソジンは乾かないと効果が出ないし、乾くまで時間がかかる。その点アルコールは短時間で乾くわけです。現在保湿成分が入ったアルコールが出ていますので、それがよいと思います。なぜ、手にこだわるのかと申しますと、母親の乳頭や母親が触ったものから、母親の手を介して児に菌がつきます。風邪のウイルスなどもそうです。新生児にはよくないものです。実をいいますと病院内でMRSAが赤ちゃんについた場合、定義上は感染だそうです。しかし、その感染源は、母親から感染というものがもっとも多いとデータででています。院内感染の予防のためにも、母親の手のアルコール消毒というものは、とても大切な予防となりうるわけです。 |
| 質問 | 出産直後の沐浴は、したほうがよいのでしょうか? |
| 天満 | 希望としては出産直後の沐浴をしないほうがよいのですけど・・・一応、ガイドラインで言いますと、アメリカの学会のガイドラインでは、生後直ぐの沐浴は良くないとはっきり打ちだしています。やるとしても、出産後安定した、最低5〜6時間以上経ってから。回数で言いますと週3回まで。やるのは奇麗な真水で十分とあります。別に石鹸を使うということもケースバイケースだと思うのです。顔にブツブツができて子供がニキビ顔みたいな感じになってくるとか、そういった場合石鹸も要るかなと思うのですけれども、基本的には何も要らないとのことでした。胎脂が付いている間はStandard Precautionsというのですけれども、要するに感染予防の標準、ガウンや手袋の着用であります。アメリカではエイズとかが多いからだと思うのですけれども。胎脂はあまりとらないほうが肌の保湿などにはよい。実は胎脂は肌を守っているのだという書き方をしています。 |
| 質問 | 新生児の肌の保湿には、ローションがいいということですが、どのように実践されていますか? また新生児期1カ月2カ月ぐらいまでの間に皮膚の炎症が起きた場合、将来の皮膚の状態にどのような影響がでますか? |
| 天満 | ヒルドイドローションなどいろいろな種類のローションがでていますが、肌の相性に合わせて塗っていく。未熟児、例えば32週とか早く産まれた赤ちゃんでは皮膚が弱くてすごく保湿成分が少ないので、すぐからからに乾いてしまいます。また感染予防のためにも、肌の保湿は重要です。塗るタイミングですが、沐浴後一回、それ以外にもう一回で十分です。未熟児で生まれた子には、1日に5〜6回塗りますと、ツルツルになります。あと母親が上のお子さんにアトピー性皮膚炎があるからと心配される場合があります。皮膚を通してほこりやダニが入って、それが刺激になっていくと考えているので、皮膚の手入れをすればアトピー性皮膚炎は減るというのが、私の持論です。 |
| 質問 | どのくらいの時期まで、保湿は必要ですか? |
| 天満 | 1歳過ぎまで塗ればいいと考えています。これを実践していればアトピーは減っていくと、私は信じているわけです。 |
| 質問 | 食物からのアレルギーは、関係しないのですか?母乳を与えている間、母親の食事からアレルギー源を排除するなどの文献をよんだことがあるのですが、先生はどのようにお考えですか? |
| 天満 | 私はそれを否定しています。理論的に考えまして、食物をいったん吸収する際には基本的にアミノ酸レベルまで分解します。そうすると、原則、抗原性がないはずなのです。要するに、抗原性がない形にまで分解して吸収しているはずですから。私は理論的に考えて、母乳に食物抗原が含まれることはなりたたないと思うのです。基本的に食事アレルギーというのは、よほど特殊な人以外はないという考えです。 実を言いますと、アトピー性皮膚炎という言葉自体が混乱を招いていると思うのです。アトピー性皮膚炎は、かゆみがあって、治らなくて、がさがさしているという特徴をあげますけれども、その状態が1歳を過ぎてきつい状態で残る人のみアトピー性皮膚炎というように考えています。先ほど言いましたように、もともと赤ちゃんは乾燥肌でかゆみが出やすいという条件が前提にありますので、保湿の問題、部屋の湿度は50%以上にしてください、ローションを使って手入れしてくださいと、指導し実践していただけたら、結構アトピーのような経過にはならないのです。 母乳に関していうと、ドイツでは8ヶ月で母乳をやめるようにしていますけど、アレルギー源と母乳の関係は、はっきりとわかりません。私は、1歳まで肌の保湿に注意して皮膚からの刺激をできるだけ抑えるほうが、経験から有効な方法と考えています。 |
| 質問 | 沐浴のときに、石鹸を使用しているのですけど、それはかまわないのですか? |
| 天満 | 石鹸でよいと思っています。ただ、石鹸をよく泡立てて、しっかり洗い流す。それと、洗う時にはガーゼを使わないで、手の指で洗ってください。ムース状の石鹸の方が楽で扱いやすいと思います。沐浴後、しっかりとローションを塗る、これでよいと考えています。 |
| 司会 | お時間となりました、天満先生、ありがとうございました。 |