| 「女性の健康と骨粗鬆症」 甲子園大学栄養学部 教授 田中 清 先生 |
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| 私は内分泌内科を専門に行っているわけですが、本日の講演のスライドに「内科からみた」という表現が出てまいります。なぜそのような表現を用いるかと申しますと、日本では骨の病気というのは整形外科の病気と、一般的に考えられております。そこで内科医の予防的な立場から骨粗鬆症に対してどのように関わったらよいかという考え方を中心に、また産婦人科医と内科の立場は異なりますが、骨粗鬆症の予防、妊娠出産中の栄養(CaとビタミンD)について、お話したいと思います。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| <骨粗鬆症で起こりやすい骨折> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
骨粗鬆症でおこりやすい骨折には、椎体圧迫骨折・大腿骨頸部骨折・とう骨遠位端骨折があります。その中で椎体圧迫骨折が一番多く、次に大腿骨頸部骨折が多いのですが、大腿骨頸部骨折は実際に起こってしまうと、臨床的には重大な結果をおよぼします。
・背が低くなったり、背中が丸くなるのは年のせいである。 ・脊椎圧迫骨折はたいした問題ではない。 ・骨粗鬆症予防のために長期に薬を飲むのは、いかがなものか? こういう意見もあるが本当だろうか? |
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| <骨祖鬆症患者の立場でQOLを考える> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「椎体の骨折がたいしたことではない」という意見は、医療従事者からの立場からみてしまうからと考えられる。患者からは、「一人でいろんなことができない。」「転倒の危険を考え、趣味も余裕をもって行えない。」と骨折前の生活とは違い不自由な生活が語られている。
・骨粗鬆症患者においては、SF-36の8つの下位尺度はすべて、年齢別標準値に比べて 低値で、特に痛みのスコアが低かった。 ・脊椎圧迫骨折により、背が低くなったり、背中が曲がることは、単なる加齢ではなく、 患者QOLを大きく低下させる。 まとめ(1) 骨粗鬆症による骨折は中高年女性のQOLを著しく低下させる なぜ骨粗鬆症を治療する必要があるか? |
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| <骨粗鬆症は、成人病・生活習慣病?なのか> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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骨粗鬆症の定義 ・骨粗鬆症とは、骨量の低下と、骨の微細構造の劣化を特徴とする疾患であり、 そのために骨折の危険が増した状態である この考え方は、成人病・生活習慣病と同じである。
・骨粗鬆症の診断は ・若年成人平均値に対する値で診断され、同年齢平均値に対する値ではない。 ・高齢者では非常に骨粗鬆症の頻度が高いことになる、こんなに高頻度でよいのか? ・骨粗鬆症は退行性疾患でもある ・いくら高齢者で頻度が高くても、白内障は病気ではないとは誰も言わない 「若い時からいくら値が減っているかが大切なことで、同年齢の数値を基準にしていない。ある程度の年齢になると骨粗鬆症と診断される。骨粗鬆症は多分に退行性の疾患である。」 まとめ(2) 骨粗鬆症は、骨折がなければ無症状の加齢に伴った退行性疾患であり、成人病や生活習慣病と同じように考え、積極的に検診で見つける疾患である |
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| <骨粗鬆症はなぜ起こるのか?> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
骨はたくさんの血液を使って活発な活動を行っている組織である。破骨細胞(骨吸収)が古くなった所を壊し、骨芽細胞(骨形成)が新しく骨を形成している。
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| <測定数値に変化がみられない問題点> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
・Bisphosphonateによる骨密度増加 ・腰椎>大腿骨>前腕骨など皮質骨 ・前腕骨専用DXAで評価したら、骨密度は増えないのは当たり前 症例(1) ・70歳女性、平成14年9月からAlendronate ・前腕骨BMD(DTX−200) ・平成14年9月 0.288 ・平成15年3月 0.273 ・尿中NTx(骨吸収マーカー) ・平成14年9月 69.0 ・平成14年12月 22.4
1)病診連携:全医療機関が全身用DXAを持つのは非現実的 2)骨代謝マーカーの併用 まとめ(3) ビスフォスフォネート時代における骨粗鬆症の診断と治療(私見) ・診断と病型分類 ・骨粗鬆症の診断─DXAによる骨密度測定(過去からの総合) ・病型分類─骨吸収マーカー(NTx) ・治療効果の判定 ・骨吸収マーカー(NTx):特に末梢骨用DXAしかない医療機関 |
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| <骨粗鬆症患者をサポートする提案> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 骨粗鬆症の診断・治療を妨げているものは、全身用DXAは装置が大掛かりで一部の医療機関にしか設置されておらず、末梢骨用DXAでは、不十分な骨密度測定しかできないことである。一説では、日本で骨粗鬆症の正しい治療を受けている患者は約20%に満たないとある。 骨粗鬆症における病診連携・チーム医療 ・病診連携 全診断施設がDXAを持つのは非現実的→地区ごとに病診連携 ・チーム医療 内科・整形外科・婦人科などの連携 医師・栄養士・保健所・看護師・薬剤師 骨粗鬆症はミニ糖尿病という色彩があると、個人的には考えています。 ドクターMichael McChung M.Dが行っているOREGON OSTEOPORSIS CENTERでの治療形態は、患者の既往歴などを示してもらい、骨密度測定をして、治療が適切に行われているかどうかの判断をセンターで行い、その結果を地域の医療機関へ報告して、その地域の医療機関が治療を継続して行っている。センターでは一部の特殊な症例治療だけを手がけている。また、骨粗鬆症の患者へのサポートするチーム(Osteoporosis Support Group,Portland,Oregon)を作って、治療だけでなく精神面でもサポートを行っている。糖尿病患者をサポートする「糖尿病教室」のような印象をもった。 骨粗鬆症の診断・治療 ・診断 ・骨密度測定 ・病型分類 ・骨代謝マーカー ・NTx ・(ucOC) ・薬効判定 ・骨密度 ・骨代謝マーカー まとめ(4)内科にとっての骨粗鬆症 ・骨粗鬆症は成人病・生活習慣病であり、内科(婦人科も含めて)の守備範囲の病気である。 ・大学や大病院の骨粗鬆症専門外来に任せてしまう病気ではなく、家庭医が高血圧・高脂血症・ 糖尿病などの加療と合わせて行うことができる病気である(骨密度測定に関してのみ、 病診連携が必要だが)。 |
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| <妊娠中のCa・ビタミンDの摂取について> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
20代、30代の栄養摂取について(妊娠出産を前提として)
なぜビタミンDは、魚に多く含まれているのかというと、紫外線と密接な関係があります。水面すぐ近くでプランクトンが紫外線をあびビタミンDを作り、それを小さな魚が食べます。その紫外線ですが、皮膚科の医師は、紫外線の有害な部分を指摘していますが、ビタミンDを形成する紫外線と、皮膚に悪影響を与える紫外線は同じ波長のものです。 活性型ビタミンDは、小腸でCaの吸収促進している。妊娠中でCaが多量に必要な時は、胎盤でビタミンDを活性化して、Caの吸収を促進している。 女性ホルモンと骨吸収について、まだまだ、わからない部分がある。
女性ホルモンは骨吸収を強く抑制している。 閉経により骨吸収が亢進して骨粗鬆症になる。 したがって閉経後骨粗鬆症は高回転型である。 しかし妊娠中は、高エストロゲン状態にありながら骨吸収が亢進している
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| <一般成人のビタミンD摂取量は足りているのか?> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ビタミンD摂取基準(第6次改定日本人の栄養所要量) ・成人及び高齢者 20〜46歳の人で、68IU/日のビタミンDの摂取を数年間続けると骨軟化症が 認められるようになり、100IU/日では発生はみられなかったとの報告があるので、 100IUとした。 98%の人が欠乏に陥らない量=所要量と定めたが ・・・何をもって欠乏というのか?骨軟化症がみられなければよいのか?
アメリカの論文には、日本より多量の摂取基準があるのに、日光に当たらない高齢者は、800〜1000IU必要と述べられている。 イギリスの論文にも、65歳以上の人には400IUでも、足りないと述べられている。 実際のところ、ビタミンD欠乏の人に、ビタミンDを補充すると、骨折が減少します。 まとめ ・骨粗鬆症は成人病・生活習慣病であり、内科医(婦人科医)が積極的に取り組む病気である ・骨粗鬆症に伴う骨折は、患者QOLを大きく低下させ、その後の骨折のリスクを高めるので、 予防しなければならない ・骨粗鬆症は、自覚症状の有無に関わらず積極的に健診を行う疾患である ・最近の大規模試験の結果から、治療により骨折の発生を大幅に抑制できることが明らかと なり、骨粗鬆症は予防可能な疾患になってきた |
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| <質疑応答> | |
| 司会 | なにか、質問はありませんか? |
| 質問 | 尿中NTxだけの測定でよいのか? |
| 田中 | NTxに関しては、尿中と血中で測定できる。血中のほうがばらつきが少ない。しかし尿中のほうが大きな変化がみられる。ただ尿中NTxでは、患者の通院時間により、検査結果にばらつきがある場合もある。どちらがよいのかは、一長一短であります。 |
| 質問 | 骨密度測定は、閉経後から測定を開始したほうがいいのでしょうか? |
| 田中 | それは、サイエンスと現場の話で分かれてくると思います。50歳以上に一律の骨密度測定というは、行政側から疑問が出されるでしょう。保険医療においては骨粗鬆症に対して治療を行うことが前提です。ある学会発表で「骨減少症」という言葉が出た時、行政サイドの方が、骨減少症という言葉の「症」にこだわりを感じると述べられていました。骨減少状態と骨減少症を比べると、「症」がつくと病気であり、治療を行わないといけないと感じられます。従って厳密にはT値70歳未満になって治療を開始するというのが原則ですが、NTxが高い場合、骨量が今後減少する予想がつくわけですから、治療を開始したいと感じるのは当然です。健診を何歳からしたらいいかというのは、とても大きな問題です。他の成人病・生活習慣病同様、骨にも個人差があり、骨粗鬆症であっても遺伝的な要素が大きいです。ですから若い年齢であれば、遺伝的要素で骨量の数値が低い場合もあります。その場合閉経後減ったのか、それ以前より低かったのか、疑問があります。財政状況が許すのであれば、早い時期から測りたいと思いますが、実際のところ40歳以上の市民健診で、骨密度の測定を検査項目に入れるのは、無理ですし、50歳でも骨密度が低い人はそんなにいないでしょう。以前京大病院で検査した、自覚症状がない人を対象とした検診結果では、60歳以上では正常と分類される人が少なかったです。私見としては、60歳になるまでのなるべく早い時期には測定したいと思います。閉経後、NTxが減少するのは、わかっていることなので、行政が許すのであれば、できるだけ早く測りたいと思っています。 |
| 質問 | 45歳から55歳まで10年間で更年期になる幅があるので、その辺で測るというのでしょうか? |
| 田中 | 閉経前であっても、骨の代謝回転は亢進していますので、更年期が始まるくらいから、可能であれば測っていくほうがよいかと思います。 |
| 質問 | Caについてですが、日本人はCaが不足しているとお話にありましたが、逆に欧米でCaが足りているのはなぜでしょうか?食事だけですか? |
| 田中 | スカンジナビアにいきますと、千何百ミリグラムととんでもない数字が書いてあるわけです。さすがにその数値は取りすぎではないかと、それだけの量を取ろうと思ったら、魚や乳製品をとんでもない量、食べないといけないわけでして・・・先ほどの話の中で、欠乏はどのへんから欠乏で、骨軟化症をおこさなければいいのであれば少量ですみますし、骨粗鬆症をおこさない量であれば、もっと必要になります。たとえばビタミンCでも壊血病をおこさない程度であれば少量ですみます。抗酸化作用や癌を抑えることを期待しているのであれば、もっと所要量が必要になります。また、取りすぎに注意となったとき、何を基準に取りすぎとするかで、かわってしまうわけです。 いずれにしても千何百は、多すぎだと思います。 それとCaの所要量を決める時に、D欠乏があるかないかで、吸収率がかわってくるわけですから、CaとビタミンDの所要量を決めていかないといけないわけです。Ca摂取でCaをどれだけとるかだけ、クローズアップされているわけですが、いくらCaだけとっても、ビタミンDがなければ、吸収されないわけです。 |
| 司会 | ご質問がないようですので、このへんで・・・、田中先生、ありがとうございました。 |