「女性の健康と骨粗鬆症」

甲子園大学栄養学部 教授 田中 清 先生
日本内科学会   日本内分泌学会   日本糖尿病学会   日本甲状腺学会   日本骨代謝学会
日本骨粗鬆症学会   日本栄養・食糧学会   日本病態栄養学会   日本ビタミン学会
 私は内分泌内科を専門に行っているわけですが、本日の講演のスライドに「内科からみた」という表現が出てまいります。なぜそのような表現を用いるかと申しますと、日本では骨の病気というのは整形外科の病気と、一般的に考えられております。そこで内科医の予防的な立場から骨粗鬆症に対してどのように関わったらよいかという考え方を中心に、また産婦人科医と内科の立場は異なりますが、骨粗鬆症の予防、妊娠出産中の栄養(CaとビタミンD)について、お話したいと思います。
<骨粗鬆症で起こりやすい骨折>
 骨粗鬆症でおこりやすい骨折には、椎体圧迫骨折・大腿骨頸部骨折・とう骨遠位端骨折があります。その中で椎体圧迫骨折が一番多く、次に大腿骨頸部骨折が多いのですが、大腿骨頸部骨折は実際に起こってしまうと、臨床的には重大な結果をおよぼします。
大腿骨頚部骨折受傷後の経過
 ・手術・長期入院を要する:95%
 ・受傷前の日常生活レベルに戻れない
                    :66%
 ・受傷後独歩不可能:50%
 ・施設で長期のケアを要する:25〜39%
 ・1年以内の死亡:24%
(N.O.F,1998)
寝たきりの原因である骨折・転倒の中で
大腿骨頚部骨折は92%
をしめる。
脳卒中 32.7%
心臓病 4.9%
骨折・転倒のうち
大腿骨頚部骨折は
         9.2%

リウマチ・関節炎
        6.1%
老衰 26.7%
その他 20.5%

いったん非外傷性骨折を起こすと1年以内の再骨折の危険が高い
 
椎体骨折の既往は将来の新規椎体骨折のリスクを増加させる

脊椎圧迫骨折
 ・背が低くなったり、背中が丸くなるのは年のせいである。
 ・脊椎圧迫骨折はたいした問題ではない。
 ・骨粗鬆症予防のために長期に薬を飲むのは、いかがなものか?
  こういう意見もあるが本当だろうか?
<骨祖鬆症患者の立場でQOLを考える>
「椎体の骨折がたいしたことではない」という意見は、医療従事者からの立場からみてしまうからと考えられる。患者からは、「一人でいろんなことができない。」「転倒の危険を考え、趣味も余裕をもって行えない。」と骨折前の生活とは違い不自由な生活が語られている。
QOL(生活の質)評価の意義
 ・医療評価に対する最近の考え方   
  ・患者からの視点を重視
 ・医療の目標
  ・実りある生活の実現
  ・健康状態の保持
 ・QOL(Quality of Life;生活の質)
  ・患者立脚型の医療評価
 QOL指標、SF-36の下位尺度
  身体機能・・・PF
  日常役割機能(身体)・・・RP 
  体の痛み・・・BP
  全体的健康感・・・GH
  活力・・・VT
  社会生活機能・・・SF
  日常役割機能(精神)・・・RE
  心の健康・・・MH

骨粗鬆症患者における SF-36下位尺度
(年齢別平均値との差)



骨折数とSF-36下位尺度(基準値との差)

骨折なし 骨折1 骨折2以上
骨粗鬆症と患者QOL
 ・骨粗鬆症患者においては、SF-36の8つの下位尺度はすべて、年齢別標準値に比べて
  低値で、特に痛みのスコアが低かった。
 ・脊椎圧迫骨折により、背が低くなったり、背中が曲がることは、単なる加齢ではなく、
  患者QOLを大きく低下させる。

まとめ(1)
 骨粗鬆症による骨折は中高年女性のQOLを著しく低下させる
なぜ骨粗鬆症を治療する必要があるか?
<骨粗鬆症は、成人病・生活習慣病?なのか>
骨粗鬆症の定義
 ・骨粗鬆症とは、骨量の低下と、骨の微細構造の劣化を特徴とする疾患であり、
  そのために骨折の危険が増した状態である

この考え方は、成人病・生活習慣病と同じである。
成人病・生活習慣病の治療目標
疾患 指標 疾患の最終像
高血圧 血圧 脳血管障害
高脂血症 血清脂質 虚血性心疾患
糖尿病 血糖 慢性合併症
骨粗鬆症 骨量 骨折

原発性骨祖鬆症の診断基準
(2000年度改訂版)
T脆弱性骨折あり
U脆弱性骨折なし


  骨密度値
正 常
  YAMの80%以上
骨量減少
  YAMの70%以上
  〜80%未満
骨粗鬆症
  YAMの70%未満




脊椎X線像での骨祖鬆化
なし
疑いあり
あり

 成人病と生活習慣病を比べると、→糖尿病・高血圧症・高脂血症はいずれにもあてはまるが、老年性白内障・難聴は成人病ではあっても生活習慣病ではない。アルコール性肝障害は生活習慣病ではあっても成人病ではない。
 骨粗鬆症を成人病・生活習慣病の位置づけで考えると、骨密度は若い頃からどのくらい減っているかで、骨粗鬆症の治療を考えないといけない。
成人病 生活習慣病
老年性白内障、
難聴退行性疾患を
含む
糖尿病
高血圧
高脂血症
アルコール性
肝障害
骨粗鬆症患者数は多すぎないか?
 ・骨粗鬆症の診断は
  ・若年成人平均値に対する値で診断され、同年齢平均値に対する値ではない。
  ・高齢者では非常に骨粗鬆症の頻度が高いことになる、こんなに高頻度でよいのか?
 ・骨粗鬆症は退行性疾患でもある
  ・いくら高齢者で頻度が高くても、白内障は病気ではないとは誰も言わない
「若い時からいくら値が減っているかが大切なことで、同年齢の数値を基準にしていない。ある程度の年齢になると骨粗鬆症と診断される。骨粗鬆症は多分に退行性の疾患である。」

まとめ(2)
 骨粗鬆症は、骨折がなければ無症状の加齢に伴った退行性疾患であり、成人病や生活習慣病と同じように考え、積極的に検診で見つける疾患である
<骨粗鬆症はなぜ起こるのか?>
 骨はたくさんの血液を使って活発な活動を行っている組織である。破骨細胞(骨吸収)が古くなった所を壊し、骨芽細胞(骨形成)が新しく骨を形成している。
女性ホルモン欠乏による骨吸収亢進
 女性ホルモンは骨吸収を強く抑制している。
 閉経により骨吸収が亢進して骨粗鬆症になる。
 したがって閉経後骨粗鬆症は高回転型である。

 骨粗鬆症はT型とU型とに分けて考えられている。
骨代謝マーカーが測定できるようになって、年齢で高回転と低回転を考えることに、疑問が生じてきた。
骨の内部構造
骨粗鬆症の病型分類
T型 U型
年 齢 閉経後 老人性
骨代謝回転 高回転 低回転
骨形成
骨吸収 ↑↑
 加齢によって骨形成や骨吸収が低下していくのではなく、骨吸収が骨形成より活発に働くことによって、骨形成が阻害されている。骨代謝マーカーを測定することにより、高回転の人には、それに見合った治療を行うことで、骨粗鬆症の進行を抑えることができる。

骨代謝マーカーの有用性
 ・骨代謝マーカー
   ・骨形成マーカー
     ・BAP(骨型ALP)
   ・骨吸収マーカー
    (コラーゲン分解産物)
     ・DPD
     (デオキシピリジノリン)
     ・NTx
骨代謝マーカーと性別および年齢との関係


 最近世界的に注目されているビスフォスフォネート系の薬で、日本で保険承認されているのは、エチドロネート・アレンドロネート・リセドロネートである。作用機序は、骨の基質のリン酸Caに対して親和性が強く、服用すると骨に沈着して、吸収されなかったものは、尿で排出される。破骨細胞が骨を食うと、基質の中に含まれているBisphosphonateも共に食われる、人間の細胞の中で骨を食うものは、破骨細胞しかないので、Bisphosphonateが非常に濃縮されて、破骨細胞の細胞毒となって死んでしまい過剰な骨吸収が止まる。Risedronateの例でも、何千人もの症例の結果から、腰椎の骨密度が増え、椎体骨折・非椎体骨折が減少することが証明されている。 ビスフォスフォネートの化学構造

Bisphosphonateの作用機序
 多くの論文のデータから、「骨折抑制効果:骨密度増加0の場合22%、骨密度増加8%の場合54%骨密度増加が0でも、高回転状態の改善によって、骨折抑制効果がある」ことが示されている。 Risedronateによる骨折抑制メカニズムは、骨吸収を抑えることによって骨密度が増える、高回転を抑えることによって、骨折を減少させる。
骨粗鬆症治療におけるBisphosphonateの意義
 ・新規骨折発生数が半減
  H2ブロッカーによる胃潰瘍手術激減に匹敵
 ・Bisphosphonateの意義
  患者個人のレベル:骨折抑制、QOL改善
  社会のレベル:医療費抑制に貢献
Bisphosphonateによる
骨折発生抑制機構

Bisphosphonate
骨吸収抑制剤
/  \
骨密度増加  高代謝回転是正
↓   ↓
骨折抑制
<測定数値に変化がみられない問題点>
骨密度測定:どの部位を測るべきか?
 ・荷重骨vs、非荷重骨
   ・荷重骨:体重の影響大(例:腰椎、大腿骨)
   ・非荷重骨:体重の影響小(例:前腕骨)
 ・海綿骨vs、皮質骨
   ・海綿骨:閉経後、ステロイド骨粗鬆症で早期に変化、
   ビスフォスフォネート治療によく反応
   ・皮質骨:副甲状腺機構亢進症で減少
皮質骨vs、海綿骨
腰椎  海綿骨>皮質骨
大腿骨  海綿骨+皮質骨
前腕骨  遠位1/3 :皮質骨
 超遠位端:海綿骨+皮質骨
踵骨  海綿骨
Risedronateを投与してもそれほど骨密度は増えない・・・なぜ??
 ・Bisphosphonateによる骨密度増加
  ・腰椎>大腿骨>前腕骨など皮質骨
 ・前腕骨専用DXAで評価したら、骨密度は増えないのは当たり前

症例(1)
 ・70歳女性、平成14年9月からAlendronate
  ・前腕骨BMD(DTX−200)
   ・平成14年9月 0.288
   ・平成15年3月 0.273
  ・尿中NTx(骨吸収マーカー)
   ・平成14年9月 69.0
   ・平成14年12月 22.4
 Bisphosphonateを投与しても効かないといわれる所以だが、前腕骨・踵骨で測る測定機器が一般的であるので、全身で測る全身用測定装置でないと、改善が数値に表れない。
 そこで骨代謝マーカーが有用となる
 ・骨代謝マーカー
  ・骨形成マーカー:BAP
  ・骨吸収マーカー:DPD、NTx
           (コラーゲン分解産物)
 ・治療薬の選択
   例)高回転型→骨吸収抑制剤
 ・薬物治療効果のモニタリング
   例)骨吸収抑制剤投与後、
     骨吸収マーカー低下
          →有効、おそらく骨量増加

 腰椎BMDはビスフォスフォネートに反応して増加するが、全身用装置がないと測れない。前腕骨など、末梢骨はBMDが小さいので、ピスフォスフォネートの薬効が十分評価できない。
骨量測定機器普及状況(2000年1月現在)
DXA(全身用・腰椎・大腿部)
            :1353台
DXA(前腕骨):6354台
CXD(中手首):499台
超音波法:1156台
◆その他:79台

DXA装置:全身用vs末梢用
DXA装置 全身用 末梢骨用
費用 比較的高価 比較的安価
設置面積
測定対象 腰椎・大腿骨等 前腕骨等
Bisphosphonate・
女性ホルモンの
薬効判定
鋭敏 鋭敏でない
対策
 1)病診連携:全医療機関が全身用DXAを持つのは非現実的
 2)骨代謝マーカーの併用

まとめ(3)
ビスフォスフォネート時代における骨粗鬆症の診断と治療(私見)
 ・診断と病型分類
  ・骨粗鬆症の診断─DXAによる骨密度測定(過去からの総合)
  ・病型分類─骨吸収マーカー(NTx)
 ・治療効果の判定
  ・骨吸収マーカー(NTx):特に末梢骨用DXAしかない医療機関
<骨粗鬆症患者をサポートする提案>
 骨粗鬆症の診断・治療を妨げているものは、全身用DXAは装置が大掛かりで一部の医療機関にしか設置されておらず、末梢骨用DXAでは、不十分な骨密度測定しかできないことである。一説では、日本で骨粗鬆症の正しい治療を受けている患者は約20%に満たないとある。

骨粗鬆症における病診連携・チーム医療
 ・病診連携
  全診断施設がDXAを持つのは非現実的→地区ごとに病診連携
 ・チーム医療
  内科・整形外科・婦人科などの連携
  医師・栄養士・保健所・看護師・薬剤師
骨粗鬆症はミニ糖尿病という色彩があると、個人的には考えています。

 ドクターMichael McChung M.Dが行っているOREGON OSTEOPORSIS CENTERでの治療形態は、患者の既往歴などを示してもらい、骨密度測定をして、治療が適切に行われているかどうかの判断をセンターで行い、その結果を地域の医療機関へ報告して、その地域の医療機関が治療を継続して行っている。センターでは一部の特殊な症例治療だけを手がけている。また、骨粗鬆症の患者へのサポートするチーム(Osteoporosis Support Group,Portland,Oregon)を作って、治療だけでなく精神面でもサポートを行っている。糖尿病患者をサポートする「糖尿病教室」のような印象をもった。

骨粗鬆症の診断・治療
 ・診断
  ・骨密度測定
 ・病型分類
  ・骨代謝マーカー
   ・NTx
   ・(ucOC)
 ・薬効判定
  ・骨密度
  ・骨代謝マーカー

まとめ(4)内科にとっての骨粗鬆症
 ・骨粗鬆症は成人病・生活習慣病であり、内科(婦人科も含めて)の守備範囲の病気である。
 ・大学や大病院の骨粗鬆症専門外来に任せてしまう病気ではなく、家庭医が高血圧・高脂血症・
  糖尿病などの加療と合わせて行うことができる病気である(骨密度測定に関してのみ、
  病診連携が必要だが)。
<妊娠中のCa・ビタミンDの摂取について>
20代、30代の栄養摂取について(妊娠出産を前提として)





妊婦カルシウム所要量(第6次改定 日本人の栄養所要量)
 ・新生児の体内Ca量=28から30g
 ・妊娠5ヶ月以降の180日間で蓄積される
 ・1日の蓄積量=29÷180=161r
 ・尿中排泄量=120r、
   経皮的損失=20rを加えると、301r
 ・吸収率を40%とすると、必要量=753r
 ・安全率を加味して900r
 (成人の所要量が600rなので付加量は300r)
 胎児が成長に必要な栄養を吸収するので、その分を付加する。
妊婦のビタミンD所要量
(第6次改定 日本人の栄養所要量) 
 ・18〜29歳
  ・2.5μg(100IU)
 ・妊婦の付加量
  ・+5μg(200IU)
 ・授乳婦の付加量
  ・+5μg(200IU)
ビタミンDの代謝
 ・ビタミンD
 (食物由来、紫外線により皮膚で合成)
   ↓肝臓25−水酸化酵素
 ・25(OH)D
   ↓肝臓1α-水酸化酵素(PTHにより誘導)
 ・1,25(OH)
   ↓
  PTHを抑制
 牛乳にはビタミンDは含まれていない。魚に多く含まれているといわれています。
なぜビタミンDは、魚に多く含まれているのかというと、紫外線と密接な関係があります。水面すぐ近くでプランクトンが紫外線をあびビタミンDを作り、それを小さな魚が食べます。その紫外線ですが、皮膚科の医師は、紫外線の有害な部分を指摘していますが、ビタミンDを形成する紫外線と、皮膚に悪影響を与える紫外線は同じ波長のものです。
 活性型ビタミンDは、小腸でCaの吸収促進している。妊娠中でCaが多量に必要な時は、胎盤でビタミンDを活性化して、Caの吸収を促進している。
 女性ホルモンと骨吸収について、まだまだ、わからない部分がある。
活性型ビタミンDの作用
小腸:    Caの吸収促進
腎尿細管: Caの再吸収
副甲状腺: PTHの分泌抑制  
骨:      直接作用
妊娠・授乳期の骨代謝マーカー・骨量の変化
高エストロゲン状態にも関わらず骨吸収は亢進する。
 1,25(OH)は妊娠初期から上昇し、
中期から後期に非妊娠時の2倍に達する。
女性ホルモン欠乏による骨吸収亢進
 女性ホルモンは骨吸収を強く抑制している。
 閉経により骨吸収が亢進して骨粗鬆症になる。
 したがって閉経後骨粗鬆症は高回転型である。
しかし妊娠中は、高エストロゲン状態にありながら骨吸収が亢進している

妊娠中はCa摂取量を増やさなくてもよい?
妊娠
/      \
高1,25(OH) 骨吸収亢進
└ 腸管Ca吸収亢進  │
 └ 尿中Ca排泄増加 ┘
Ca摂取量を増やしても、
尿中Ca排泄量を増やすだけである?
カルシウム摂取量の年次推移(国民栄養の現状)
日本人のCa摂取量は、600r必要とされているが、妊娠中に限らず600rに達していない。
<一般成人のビタミンD摂取量は足りているのか?>
ビタミンD摂取基準(第6次改定日本人の栄養所要量)
 ・成人及び高齢者
  20〜46歳の人で、68IU/日のビタミンDの摂取を数年間続けると骨軟化症が
  認められるようになり、100IU/日では発生はみられなかったとの報告があるので、
  100IUとした。
  98%の人が欠乏に陥らない量=所要量と定めたが
     ・・・何をもって欠乏というのか?骨軟化症がみられなければよいのか?
何をもってビタミンD欠乏と定義するのか? 
DeficiencyとInsufficiency
 ・Vitamin D Deficiency(欠乏)
   顕著な2次性副甲状腺機能亢進症
   カルシウム吸収障害
   骨軟化症、筋力低下
 ・Vitamin D Insufficiency(不足)
   軽度の2次性副甲状腺機能亢進症
   軽度カルシウム吸収障害
   骨密度減少
アメリカにおけるビタミンD摂取基準
 ・Adequate Intake(1997)
   19−50歳 200IU
   51−70歳 400IU
   71歳以上 600IU
 ・(参考)第6次改定日本人の栄養所要量
   6歳以上 100IU
 アメリカで70歳以上の高齢者には、ビタミンDを600IU必要であるといっている。それに比べると日本の6歳以上:100IUという栄養所要量は、少なすぎる。
 アメリカの論文には、日本より多量の摂取基準があるのに、日光に当たらない高齢者は、800〜1000IU必要と述べられている。
 イギリスの論文にも、65歳以上の人には400IUでも、足りないと述べられている。
 実際のところ、ビタミンD欠乏の人に、ビタミンDを補充すると、骨折が減少します。

まとめ
 ・骨粗鬆症は成人病・生活習慣病であり、内科医(婦人科医)が積極的に取り組む病気である
 ・骨粗鬆症に伴う骨折は、患者QOLを大きく低下させ、その後の骨折のリスクを高めるので、
  予防しなければならない
 ・骨粗鬆症は、自覚症状の有無に関わらず積極的に健診を行う疾患である
 ・最近の大規模試験の結果から、治療により骨折の発生を大幅に抑制できることが明らかと
  なり、骨粗鬆症は予防可能な疾患になってきた
<質疑応答>
司会  なにか、質問はありませんか?
質問 尿中NTxだけの測定でよいのか?
田中  NTxに関しては、尿中と血中で測定できる。血中のほうがばらつきが少ない。しかし尿中のほうが大きな変化がみられる。ただ尿中NTxでは、患者の通院時間により、検査結果にばらつきがある場合もある。どちらがよいのかは、一長一短であります。
質問 骨密度測定は、閉経後から測定を開始したほうがいいのでしょうか?
田中  それは、サイエンスと現場の話で分かれてくると思います。50歳以上に一律の骨密度測定というは、行政側から疑問が出されるでしょう。保険医療においては骨粗鬆症に対して治療を行うことが前提です。ある学会発表で「骨減少症」という言葉が出た時、行政サイドの方が、骨減少症という言葉の「症」にこだわりを感じると述べられていました。骨減少状態と骨減少症を比べると、「症」がつくと病気であり、治療を行わないといけないと感じられます。従って厳密にはT値70歳未満になって治療を開始するというのが原則ですが、NTxが高い場合、骨量が今後減少する予想がつくわけですから、治療を開始したいと感じるのは当然です。健診を何歳からしたらいいかというのは、とても大きな問題です。他の成人病・生活習慣病同様、骨にも個人差があり、骨粗鬆症であっても遺伝的な要素が大きいです。ですから若い年齢であれば、遺伝的要素で骨量の数値が低い場合もあります。その場合閉経後減ったのか、それ以前より低かったのか、疑問があります。財政状況が許すのであれば、早い時期から測りたいと思いますが、実際のところ40歳以上の市民健診で、骨密度の測定を検査項目に入れるのは、無理ですし、50歳でも骨密度が低い人はそんなにいないでしょう。以前京大病院で検査した、自覚症状がない人を対象とした検診結果では、60歳以上では正常と分類される人が少なかったです。私見としては、60歳になるまでのなるべく早い時期には測定したいと思います。閉経後、NTxが減少するのは、わかっていることなので、行政が許すのであれば、できるだけ早く測りたいと思っています。
質問 45歳から55歳まで10年間で更年期になる幅があるので、その辺で測るというのでしょうか?
田中  閉経前であっても、骨の代謝回転は亢進していますので、更年期が始まるくらいから、可能であれば測っていくほうがよいかと思います。
質問  Caについてですが、日本人はCaが不足しているとお話にありましたが、逆に欧米でCaが足りているのはなぜでしょうか?食事だけですか?
田中  スカンジナビアにいきますと、千何百ミリグラムととんでもない数字が書いてあるわけです。さすがにその数値は取りすぎではないかと、それだけの量を取ろうと思ったら、魚や乳製品をとんでもない量、食べないといけないわけでして・・・先ほどの話の中で、欠乏はどのへんから欠乏で、骨軟化症をおこさなければいいのであれば少量ですみますし、骨粗鬆症をおこさない量であれば、もっと必要になります。たとえばビタミンCでも壊血病をおこさない程度であれば少量ですみます。抗酸化作用や癌を抑えることを期待しているのであれば、もっと所要量が必要になります。また、取りすぎに注意となったとき、何を基準に取りすぎとするかで、かわってしまうわけです。
 いずれにしても千何百は、多すぎだと思います。
それとCaの所要量を決める時に、D欠乏があるかないかで、吸収率がかわってくるわけですから、CaとビタミンDの所要量を決めていかないといけないわけです。Ca摂取でCaをどれだけとるかだけ、クローズアップされているわけですが、いくらCaだけとっても、ビタミンDがなければ、吸収されないわけです。
司会 ご質問がないようですので、このへんで・・・、田中先生、ありがとうございました。