「乳癌の診断について―画像診断を中心に―」

京都第一赤十字病院 外科 副部長  李 哲柱 先生
<要 旨>
乳腺の疾患には悪性腫瘍として癌をはじめ肉腫やリンパ腫、境界病変として葉状腫瘍、良性疾患として線維腺腫、腺腫、過誤腫などのほか乳腺症、乳腺炎など様々です。乳癌は、乳管内に限局している非浸潤癌(パジェット病を含む)、と浸潤癌(乳頭腺管癌、充実腺管癌、硬癌などのほか小葉癌や粘液癌などの特殊型)に分類されますが、詳細は乳癌取り扱い規約を参照して下さい。
乳腺は図1に示すように約20の腺葉から構成されおり、腺葉は細乳管と腺房上皮から成る多数の小葉単位からなり、乳癌はほとんどこの小葉内の乳管、腺房上皮から発生します。そのため初期の乳癌は原則的に1つの腺葉単位に拡がります。ですから乳頭分泌や乳管内の微細石灰化、あるいはパジェット病における乳頭びらん(図2)など早期乳癌を診断する上では解剖を理解することが重要です。さらに進行すると腫瘤を形成したり乳房が変形したり、乳頭が陥没(図3)したりと自覚症状が出現します、また特殊な例として炎症性乳癌(図4)などがあり視触診でかなり診断が可能です。

 図1
 乳頭びらん            陥没乳頭             炎症性乳癌            
診断方法としては、
 1視触診、
 2超音波、
 3マンモグラフィー、
 4 MRI、CT、
 5乳管造影、
 6乳管内視鏡、
などを順じ行い最終的には
 7細胞診、
 8生検で確定診断を得た後、治療方針を決定します(図5)。

  図5
画像診断として最も利用されるのが、超音波です。超音波は腫瘤の鑑別に非常に有用ですが(図6、7)、非浸潤癌で腫瘤としてははっきりしない低エコー病変や乳管内に微細石灰化を疑わせる点状高エコー、拡張乳管内の隆起性病変(図8)なども重要です。正常乳腺と充実腺管癌のエコー、ルーペ像(図9、10,11)、典型的な病変の画像(図12〜22)を示します。
 図6
 図7

 図8

 図9

 図10

 図11

 図12

図13

 図14

 図15

 図16

 図17

 図18

 図19

 図20

 図21

 図22
次はマンモグラフィーです。最近マンモグラフィー検診が普及しガイドラインも出ていますので用語などそれに準じて使用しますが、マンモグラフィーの特徴は微細石灰化像により早期の癌を検出できる点にあり、特に比較的高齢者の検診には適しているようです。石灰化には乳管内で癌が壊死してできる壊死型(微細線状、分枝状)と分泌物が沈殿してできる分泌型(微小円形)、良性疾患に多い乳管外の間質におこる間質型(粗大石灰化)などがあり、その形状や分布により良悪の鑑別を行います。石灰化像(図23〜26)の他、腫瘤像(図27〜29)はもちろん乳腺実質の所見(構築の乱れ、図30)なども重要です。

 図23

 図24

 図25

 図26

 図27

 図28

 図29

 図30
最後に近ごろ術前の癌の広がり診断によく使用するMRIの特徴を図31〜35に示します。乳房温存手術を行う際にMRIの立体画像を検討し切除ラインをイメージすることは残存乳腺の整容性と根治性を保つための必要最小限の切除を行う上で非常に有効です。またマンモグラフィーや超音波で検出できないような腫瘍を見つけることも可能です。早期診断に有用であった症例の画像を図36〜37に示します。

 図31

 図32

 図33

 図34

 図35

 図36

 図37
最後にまとめですが、各検査の特徴をよく理解し総合的に診断することが重要であり特に大きな病変を見逃さないために視触診とその延長にある超音波検査をしっかり行うことが大事であると思います。