「女性の肥満症〜ウエストを細くする漢方薬〜」
京都市立病院 糖尿病・代謝内科部長
京都府立医科大学臨床教授 吉田 俊秀 先生



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 25年間糖尿病外来を行ってきましたが、肥満している糖尿病患者さんが多いので、糖尿病外来に肥満外来を併設して治療を行っております。いままで肥満の方だけでも5000人くらいの方を診察してきました。年間に1000人くらいの肥満患者をみています。その内訳は女性が92%で、平均年齢が47歳、平均体重85kgです。肥満外来を希望される方が多すぎますので、70kg以下の方はお断りしているのが現状です。
 本日は、今まで行ってきた肥満治療、特に女性の方の肥満治療・メタボリックシンドロームについてと、肥満に効果的な漢方薬についてお話いたします。
<肥満治療について>
 患者さんに対して、ただ痩せなさいといっても長続きはしない。痩せるメリットを説明して、患者さんの口から「がんばって痩せます」と言う言葉を引き出すのがポイントとなる。
 肥満患者さん全体を標準体重まで減量させる必要はなく、現在の体重の5%の減量を目安とする。
5%の体重減量は、糖尿病や高血圧などの軽減につながるし、3ヶ月間で達成できる。
しかし、膝痛・腰痛・生理不順・無呼吸症候群などの場合は、標準体重まで落とさないと、効果が期待できない。
肥満治療成功の秘訣
 単なる食事指導だけでは痩せられない
1、痩せればどんなメリットがあるのかを
  十分に教える。
2、5〜10%の減量で合併症は治ること
  が多く、この程度の減量なら3ヶ月
  間で達成できることを教える。
3、個人の体質に併せたテーラーメイド型
  食事指導が効果的。遺伝子診断がで
  きなければ基礎代謝量の測定でOK。
4、満腹感を与えるため、毎食前にキャベ
  ツなどの生野菜を10分間かけて大量
  に噛ませる。
5、過食の原因にストレスが多いことを
  認識し、うまく聞き出し取り除く努力を
  する必要がある。
 食事・運動療法を行っても痩せない患者さんの中には、肥満しやすい遺伝子を持った方がいる。このような遺伝子をもつと、基礎代謝量がを鈍っており、なかなか減量できない。そこで遺伝子診断を行うことで、その方の体質にあったカロリー摂取量などのメニューを作成して、治療を進めていく。
 食事療法が失敗する原因として、満腹感が得られないことが一因となる。食事前、10分間生野菜を噛むことによって、満腹中枢が1時間活性化され、食物繊維の働きによる便秘の解消や、減量後のしわ予防に対しても効果が期待できることを説明して、実行してもらっている。
 過食の原因となる大きな要因は、ストレスにある。そこで診察の中で、ストレス原因の解明と改善策の指導を心がけている。
 日本人の肥満軽減に関する考えは、欧米に比べて100kg・200kgを超える方が少ないことから、積極的な動きがなかった。しかし、日本人は肥満に弱い民族であることや、日本人の遺伝子の中に、倹約遺伝子を所有する方が多いことがわかり、食欲を抑える薬剤の認可に関する動きもみられるようになってきている。
 肥満学会に所属している1500名の中で、肥満専門医はわずか75名である。肥満外来を積極的に進めていく動きに拍車がかからない原因として、肥満治療に欠くことのできない食事療法だけでは保険点数があまり取れないので、採算の面からも敬遠する医療機関が多い。
日本人肥満の特徴:肥満に弱い民族
1、欧米人に比べると、軽度肥満(BMI 25kg/uを超える)の状態で、糖尿病、高血圧、高脂血症など代謝異常の合併頻度が高い。
2、欧米人に比べ、血中インスリンレベル及び分泌能が低いので、高度肥満になる前に糖尿病になりやすい。
3、欧米人に比べ、いわゆる、倹約遺伝子をもつ頻度が高い。
肥満はこんな病気をひきおこす
 ・糖尿病 ・高血圧 ・心血管障害
 ・高脂血症 ・脂肪肝 ・呼吸器障害
 ・痛風 ・胆石症
 ・ガン(乳ガン 胆嚢ガン 大腸ガン)
 ・腰痛・膝痛
 全国で2300万人が肥満といわれているが、肥満=病気ではない。なんらかの合併症がでて治療が必要な場合を、肥満症と位置づけている。ただ、肥満していない人よりも、肥満している人の方が、合併症の発症が2〜8倍、無呼吸症候群も2〜8倍多くなっている。
<内臓脂肪について>
 なぜ、肥満の人に糖尿病や高血圧などの病気を発症する人が多いのかという疑問は、1995年に脂肪細胞からこれら合併症を引きおこすホルモンが分泌されていることが発見され解明された。。
 肥満した、脂肪細胞からは下記のホルモンが分泌され、病気を引きおこす。、
 TNF−α(インスリン抵抗性) →糖尿病
 アンジオテンシノーゲン、レプチン →高血圧症
 遊離脂肪酸 →高脂血症
 PAI−1 →狭心症・心筋梗塞
 アンドロジェン・エストロジェン
     →子宮癌・卵巣癌・前立腺癌
しかし、悪いホルモンばかりではなく、正常な脂肪細胞からは身体に良い抗動脈硬化作用をもつアディポネクチンというホルモンも分泌されている。でも、脂肪が肥満してくるとアディポネクチン合成は低下してしまう。
 しかし、5%脂肪を減らすだけで悪いホルモンは低下し、正常な働きをする脂肪細胞へと戻る為、合併症はなくすことが出来る。
メタボリックシンドローム 診断基準
ウエスト周囲径  85cm以上(男性)
            90cm以上(女性)
(内臓脂肪面積 男女とも100cu以上に相当)
      ↓
・血圧 収縮期130mmHg以上 かつ/または
     拡張期85mmHg以上
・空腹時の血糖値 110r/dl以上
・中性脂肪        150r/dl以上 
・HDLコレステロール  かつ/または40r/dl未満
      ↓
うち2つ以上が該当する場合
 日本人に多い内臓脂肪型の肥満を解消するために、メタボリックシンドロームの概念を浸透させている。
<肥満と遺伝子の関係>
 食事療法をしていても、痩せない人がいる。それは所有している遺伝子の体質によって既定されているということがわかってきた。
 遺伝子の種類に変異がみられると、それぞれの特徴がみられ、レプチン受容体などの遺伝子をもつと超肥満になってしまう。研究結果から日本人の倹約遺伝子の中で代表的なものは、β3−アドレナリン受容体遺伝子変異であることが明らかになった。
 
倹約遺伝子
 長い飢餓の時代を生き延びられるように、食べたものを脂肪として効率よく蓄えることができるように変化した遺伝子。飽食の現代では、エネルギー効率のよさが肥満を招いている。
 β3−アドレナリン受容体ミスセンス変異(Trp64Arg)は、1995年の調査でアメリカアリゾナ州のピマインディアンにて発見された。
 この遺伝子異常は日本人の34%にあり、遺伝子変異をもつ人の特徴として、基礎代謝量が、1日200キロカロリー低下している。太った人の脂肪には24%の水分が含まれている。それゆえ7000キロカロリーエネルギーがマイナスになれば脂肪が1kg減少します。
消費エネルギーは日本人女性の場合、
 基礎代謝量 1200キロカロリー + 食事誘発熱産生 200キロカロリー
  + 運動エネルギー量 (1万歩で450キロカロリー) = 1850キロカロリー
 なので、基礎代謝量にあせわた食事療法を行わせると、1日当り650キロカロリーエネルギーが負になり、この食事療法を続けると1ヶ月で3kg弱減量できる。
 しかし、このβ3の遺伝子変異をもつ人では基礎代謝量が200キロカロリー鈍っているので、この食事療法では痩せにくく、1200キロカロリーの食事を1000キロカロリーにすることでうまく減量できるようになった。
・アンカップリングプロテイン(UCP-1)遺伝子変異(A−3826G)
機 能:脂肪を燃焼させる、熱産生タンパクの
     遺伝子変異
影 響:1日の基礎代謝量を100kcal低下させる
保有率:日本人の4人に1人が保有
・β2アドレナリン受容体遺伝子多型(Arg16Gly)
機 能:交感神経を活性化する遺伝子
影 響:脂肪細胞の脂肪分解促進
保有率:日本人の16%が保有、基礎代謝量を
     300キロカロリー亢進させる
 遺伝子の中でも、β2アドレナリン受容体多型は、
 痩せやすい遺伝子である。
<ダイエットの実践とストレスの関係>
 まず、患者さんの口から「甘いものをやめます」、「ダイエットします」などの気持ちを聞きだして、リバウンドを繰り返していると痩せにくくなるので、何回目のダイエットかを聞いてから、ダイエットの方法を指導している。
健康的に痩せるために
1)食事療法:@砂糖は止め、脂類は極力減らす
         A蛋白質70g(牛乳1本、卵1個、
         魚80g、肉80g、豆腐1/2丁)
          +果実2個+米飯2/3杯×3回
         B食前に生野菜を大量に食べる
2)運動療法:1日3回、食後30分後より30分歩く
         〔1日1万歩(≒300Kcal)を目標に〕
3)行動療法:@どか食いはよくない
         (1日3回に分けて食べる)
         A早食いはよくない(食事時間は
         20〜30分かけて食べる)
         B夜8時以降は食べない
         (生野菜と水は許可)
過食の原因となるストレス
@嫁姑の確執
A夫の帰りが遅い
B子供の受験
C借金、ローン
D夫の浮気
<肥満症の薬物治療ー漢方薬ー>
肥満症の薬物療法
1、エネルギー摂取の減少を目的とするもの
 中枢性アドレナリン受容体アゴニスト
 (サノレックス)
 選択性セロトニン再吸収阻害薬
 (デプロメーリ、ルボックス、パキシル)
 中枢性アドレナリン・セロトニン受容体アゴニスト
 (シブトラミン)
 脂肪吸収阻害薬
 その他(レプチン、Axokine、リモナバン、
  NPYアンタゴニスト)
2、エネルギー消費の増加を目的とするもの
 β3アドレナリン受容体アゴニスト
 防風通聖散
3、自律神経調整薬
 (グランダキシン、メイラックス)
 防風通聖散は、麻黄に含まれるエフェドリンと甘草等に含まれるホスフォジエステラーゼ阻害作用いによr痩せる。白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞のβアドレナリン受容体を活性化させ、ノルアドレナリンの効果を持続されるからである。また使用することにより、肥満につきものである便秘改善効果を知られている。
  
  
  
 防風通聖散は、食事療法と運動療法を平行して行うと、BMI・ウエスト周囲径・内臓脂肪・HOMA−Rの改善で期待できる。
 本剤を使用するにあたって注意点は、100名に1人に肝機能障害がみられることがある。